武器堂編

第20話

 八月一日。


 今日はヤキソバの部屋にテッシが来ることになっている――。


 だが、掃除をするヤキソバを、フェリリは白いめで観察し悪態をつく。


「ヤキソバは、おんなの子の知り合いが増えたからって、ガツガツしすぎナノ」


「お前なんか、勘違いしてるだろ」


 黙々と廃物をつまんで、所定の容器にほおるヤキソバ。


「ヤキソバの部屋の方向から、テッシちゃんがこらえきれぬ落涙で、床の羽毛をしずませながら廊下をひたはしる。


 呆然とするわたし。


 そして、果敢にもヤキソバの部屋の開扉を試みる、扉は意外、無抵抗。


 すると、得体のしれぬ濁りが空気をよどませ、それをひと噴きの新風が、窓布をはらませつつ消し流す。


 ゆれうごく扉、その金具は不快な音をかきならしながらきしむ。


 それが人の心もちさえも乱すなか、背肉で壁にもたれ無造作に足をほうり、うずくまる血まみれのヤキソバが……」


「おい! 撃退されてんじゃねーか俺が!」


「ま、実際そうなるとおもうナノ」


 目をつむり、腕をくむフェリリ。


「部屋で今後なかまに入れるクラスとか決めたり。


 パーティの方向性とか決めたり。


 倒しやすいモンスターの生息地をしらべたりして、今後の方針を決めるだけだから」


「スケベな意味で、今後の将来の二人の方向性や方針を決めたいナノ?」


「お前は暴言王かよ……」


「そうだ、妹を探す件どうなってるんだ?」


 ヤキソバは話題を替えつつ問う。


「また女なの?」


「そら妹だから当然だろ」


「血の繋がらぬ妹と血を繋げたいナノ?」


「意味不明すぎだろマジで……。フェリリさんもしかして何か怒ってます?」


「わたしはレシートじゃない!」


「えっ」


「最近のわたしの仕事が、敵のステータスの数字を口から排出する仕事ばかりになってたナノ!

 改善をきぼうするナノ! ストライキなの!」


「魔卓の機能で、敵味方のステータスの数値やダメージを可視化するっていう。魔法をつかった機能があるみたいなんだが、今度からそれにするか?」


 ヤキソバはフェリリの顔色をうかがいながら説明する。


「駄目ナノ」


「そうそう、ダメージの話――」


「違うナノ! その案は没ナノ!」


「えっ、なんでなんだぜ?」


「私の仕事が、皆無になりそうなの」


 無理難題を提起され、ヤキソバはうなだれ困り顔だ。


 そんな会話をする二人を、ドアの隙間からのぞきみるテッシ。


「すごく、部屋に入りにくいデス……」

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