第19話
「あ……いや……うーん。えっと……これから、ちょっと時間ある……?」
なんか。自分のことながら。態度があやしい気がする……
「めちゃくちゃありますデス!」
そんなあんの……?
普段、この子。なにやっているんだよ……?
俺は疑問を抱きつつ。テッシちゃんから視線を外した――
そして。チラチラのぞき見るように、テッシちゃんの表情をうかがって言った。
「――実は……俺。パーティメンバーをさがしていて……でも、レベルが低くて集まらなくて――だから。講習の日程が、完全に終わってからでいいから。テッシさんに、パーティに参加してほしいんだけど……どうかな? まだ、俺ひとりだけで。これから、他のメンバーを探す予定なんだけど――」
…………。『レベルが低くて集まらなくて』ってあたり。ちょっと、脅しっぽいセリフチョイスな気がする……
「いいデスよ」
「――それって、どっちの意味……?」
「――わたし、パーティに参加したいデス」
「そっかーよかったー」
俺は胸をなでおろす。
「わたしの方こそ良かったデス――実はこの講習は、受講者が二人以上いないと開けないもので――三ヶ月も待っていたのに、誰もこなくて困ってたんです――講習もできて、パーティにも参加できて――ヤキソバさんはわたしの救世主ですね!」
テッシちゃんは下からのぞき込むように、満面の笑みをみせた。
そういえば、三ヶ月前に協会支部代理の家で、テッシちゃんを見たんだったか。
「これからも、パーティとして頑張りましょうデス」
テッシちゃんはガッツポーズをする。
「よろしくお願いします」俺は軽く頭を下げた。
♦
――それから二日が経ち、講義は最終日を終える。
俺とテッシは、LV九まで上がった。
「これでこの講義も終了ですね」「お疲れ様です」
二人は会釈する。
「……ここで一ついっておかないと、いけないことがあります」
ララさんが、言いにくそうにいう。
「それは、この講義が中々開かれなかった理由です……」
「理由?」
「それは、私たちが二人だったからです――実はわたしのクラスは『活動不能状態』を解除できるマジックが使えないクラスで、それで妹の魔法が必要だったんです――できるだけ、加勢しない方向性でやっていたので。結局蘇生魔法どころか、回復魔法も、あまり使わなかったんですけれども――二対一で教えるとなると、費用が割高になりますので……お待たせすることになって、すいません……」
二人は両手を、ひざにそえて頭をさげる。
「いえいえデス。ひまだったので、ずっと代理所で待ってただけなのです」
テッシも頭をさげる。
「まあ。俺はここへ来て。すぐに始まったので、待っていないんですけどね」
なんだか微妙に、かやの外という感じの俺。
「きっとこれからも。私たちのような不器用な冒険者と、出会うとおもいます――むしろ器用な冒険者のが少ないとおもいます――でも助け合っていけば、きっと冒険が、よりよいものに、なっていくと思います――これで講義を終了します……ありがとうございました――」
「ありがとうデス!」
「ありがとうございましたー」
「ありがとうナノ!」
拍手の中、俺はおもった。この不器用な二人のおかげで、俺とテッシちゃんが、めぐりあったというのなら、人間の不器用さというものも、案外捨てたものではないと――
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