第18話

「――とどめデスっ!」




 テッシがリザー刀にかけていく――まだ、リザー刀のHPは結構あるけどね、テッシちゃん――リザー刀はおもむろに、刀をおさめる――「ふり下ろしっ!」 かけ声とともに、テッシは金属棒を頭めがけてふり下ろす――そのとき、リザー刀の瞳があやしくかがやき、左腰にある刀を抜きはらった――、一筋のひかりは、長い三日月のような残光となり、テッシの右わき腹をおそう――つぎの瞬間、雷光がはじけとんだ。


「攻撃同士が、ぶつからなくても。自分と相手の攻撃が、同時に当たりそうなくらい距離をちぢめると、鍔ぜり合い状態がはっせいするんです」ララさんがいう


「リザー刀の居合い抜き、BP+一五〇〇なの!」


「+一五〇〇? やべえ……!」援護しようとスタンバってた俺は、あわててかけよる――「なで切り!」相手の剣に技をあてるが――俺とテッシは、吹っとばされる――


「テッシに三五〇! ヤキソバに三三一ダメージなの!」


「敵と仲間が鍔ぜり合い中に、『自分の技をあいての攻撃範囲にぶつける』場合、ダメージは自分PTの連携参加人数で等分されるわ」「ダメージを分散させたい場合でも、援護は有効ね」


 ひるむ俺たちをみて、リザー刀はニヤッと笑う。


 リザー刀は自身の刀をおさめようと、前にかかげた刀の、切っ先を下にむける。


「させないデス」


 テッシは素早く間合いをつめると、敵の刀にむかって金属棒をふる――「振り下ろしっ」 敵の武器と激突し、鍔ぜり合いが発生する――俺も参加しねえと……「なで切り!」 俺はかけよって技をはなつ、雷光ははじけ、相手はふっ飛ばされた。


「リザー刀に二一五ダメージ 『納刀』 BP+〇 自身の刀をおさめる が失敗したよ!」


 あれって技なのかよ。


 効果っていうか、行動じゃないのかよ。


 いや、ヤジマジロの丸まる事とかも、行動だけどよ。


「『技の追加効果は、弾いてしまえば効果は出ない』わ。ヤキソバくんの、『なで切り』が弾かれた場合、『鍔ぜり合いの最中は、BPマイナス二〇〇が出る』けれど。鍔ぜり合いの後に、連携がまだ続いていたとしても。『それ以降の、BPマイナス二〇〇は無効化される』わ」


 ララさんが説明する。


「追加効果は、連携中に有効っていったけど。あの『納刀』は、連携後もきえない効果のようね……」


 そりゃ、連携終わった瞬間に、刀が飛び出てきたらビックリですよ……


 リザー刀の方をみる。


 納刀しようとしているようだ。


 テッシが見逃さなければ、同じ方法で納刀をキャンセルして。はめ倒せるはずだ。


「フェリリ。あと、リザー刀の残りHPはいくつだ?」


「リザー刀 HP  五五一/一二〇〇 BP八〇〇

 ヤキソバ HP 一〇二九/一三六〇 BP六七〇

 テッシ  HP  五五〇/一〇〇〇 BP四七〇 なの」


「分かった、サンクス」


 テッシは、後ずさりするリザー刀に、にじり寄っておいつめる。


「ふり下ろしデス」


「なで切り」


「リザに、二一七ダメージなの」


「ふり下ろしデス」


「ほいほいっと、なで切り」


「リザっちに、二二〇ダメージなの」


「ふり下ろしデスです。ふわぁ~」


「なで切り……」


「たぶん二〇〇くらいのダメージなの。たおしたナノ」


 なんか。もう。ルーチンワーク化してるな。


 リザー刀はたおれると、黒いほこりと化し。分裂し。パーティーに配られる。


「テッシちゃんのLVが六になったよ。ヤキソバは追いつかれたナノ」


「やったデス!」


 テッシちゃんは、金属棒を右頬と右肩ではさむ。


 両腕で胸にかかえて、嬉しそうだ。


「おいつかれたかー」


 俺は言う。が。ダメねずみ一体分なんだ。


 いままで、追いつかれなかったのが、不思議なくらいだったな。


「喜んでいるところ、水を差すようで悪いんですが。ちょっと。いいですか?」


 ララさんがいう。


「はいデス」


「パーティの連携に参加したときに、自分がつかえる連携――それは、『自分一人でつかえる連携技と、おなじ組みあわせと順番』になります――つまり、技A、技B、技Cの順番で、連携技が一人でつかえるなら、連携中も、これらが同じ順番でつかえます――あいだなどに、仲間の技、敵の技が入ってしまっても同じです」


「そうなんデスか」


「もう一つあります――ルールというより法則なんですが――連携は『強い技から、弱い技へつながっていくことが多い』です――大ダメージ技、中ダメージ技、小ダメージ技というような感じですね」


 リリさんが、後ろ手にもった杖を、左右にふりながらいう。


「……ってことは……弱い技から使っていって、敵が技を使いきったら、強い技で大ダメージ――とかってできないってことですか……?」


「……簡単にはできませんが、パーティでそれに近いことはできますね――ヤキソバさんとテッシさんが、ヤジマジロ戦でやってた連携ですね――テッシさんが、ヤジマジロにガードをつかわせて――ヤキソバさんが、追撃をしていましたよね?」


 ああ――そんなことあったな、そういえば……


「今日のところは、これで終わりですね」「お疲れ様です」


 置いていた荷物を片付けて、帰り支度をするリリさんとララさん。


 テッシも、背中をみせて荷物をいじり、帰る準備をしている――


「テッシちゃん帰っちゃうナノよ?」


「わ、分かってるよ……」


 なんか、緊張してへんな汗かいてきたな……。俺はテッシに近よっていく……気配に気がついたのか、俺の影に気がついたのか、不意にテッシがふりかえる……!


「ヤキソバさんどうしたんですか……?」

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