第16話

 俺は倒れたまま顔を上げる。




ヤジマジロはもう一度樹木を、駆けのぼっていた――。



「やべえっ……!」――そのとき、ヤジマジロの背後に、ひとつの影――テッシだった――ヤジマジロが跳ねとび、最高度になったとき、テッシは上から、武器で敵を叩きおとした――「三五ダメージなの!」ヤジマジロはボール状態のまま、地面に叩きつけられる――一度バウンドし――地面でとまり、俺に背をむけている状態で、身体を開く――「チャンスだ!」俺は身体を起こし、立ち上がろうとした、そのときだった――視界に、光がチラつくのが見える、右手を見る――光ってるじゃねーかこれ! そのまま、ヤジマジロにかけよって叫んだ――「十文字切り!」一撃目の横切りと同時に、相手は反応して丸くなり――ヤジマジガードをする――続く、二撃目の縦切り、相手はテールアタックで迎えうつ――俺はテールアタックを体にうけながらも、縦切りを相手にあてた――


「ヤジマジロに一八〇、二五五ダメージ。ヤキソバに六六ダメージなの!」


「よし、あとヤジマジロのHPはいくつだ?」


「六〇五なの」


 俺は、移動をしないヤジマジロに対し、攻撃をつづける。


「なで切り!」


 ヤジマジロは丸くなりガード。なで切りがあたる。


 その後、ヤジマジロは連携でテールアタックをはなつ。


 俺の腹を、テールアタックの尻尾がうつ。


「ヤジマジロに一〇〇ダメージ、ヤキソバに一四〇ダメージ、なの」


「……俺のHPあといくつだよ……?」


「二〇五なの……」


「マジかよ……やべえ……」


 HPがゼロだと、経験値がもらえないとか、ないだろうな……


「やられても大丈夫ですよ。私が復活させますから」リリさんがいう。


 ララさんが回復役で、リリさんが復活役なのか?


 そんなことをいいつつも、戦いの場ではテッシが敵に攻撃している――ヤジマジロは、ヤジマジガードを使ってふせぐ――そのとき、俺の右手が光った、いま十文字切りを使ったら、テッシちゃんとの連携で、二連撃の両方がまともに入るんじゃね? 俺は相手の近くに、すぐにいき――


「十文字切り!」


 技をはなった――相手はテールアタックを、俺の一撃目にあわせる。


「ヤジマジロに、二五一 二九五ダメージ! あとヤキソバに七〇! ヤジマジロを倒したナノ!」


 ヤジマジロは、あおむけにたおれる。


 そして、黒いほこりとなって消えていく。


 それをみて、周りにいたヤジマジロは、逃げるように散っていった。


 あくまでも野次馬なのか……


「お前わざとヤジマジロが、逃げること言わなかったな……」


「ドキドキしたナノ?」


 フェリリは悪びれないようすだ……こいつ……


「ヤキソバはLV六に、テッシちゃんはLV五になったよ。テッシちゃんは『ふり下ろし』BP+五〇〇を覚えたナノ」


 テッシは笑顔で嬉しそうだ。


「そういえば連携のとちゅうで、動けなくなったことがあったんですけど」


 俺はリリさんに対し、疑問を口にしてみた。


「ああそうですね。連携中は巻きこまれた敵味方の、両方が動けませんよ。正確には、移動が困難です」


「えっ、困るじゃないですか」


「困ることもありますけど、有利なこともあります。逃げ足の速い敵。攻撃をかわす敵。彼らに攻撃が当たりやすくなります。それに、技って唱えると同じモーションで、勝手に出ますよね? 相手がすばやくて自由に動けると、わりと簡単にさけられますよ」


 それって逆にいうと、自分が簡単に避けられないって、ことじゃねーの……


 続けてリリさんがいう。


「連携開始条件は『自分が技などで攻撃をして、相手が一定時間内に反応すること』この反応には、防御技もふくまれます。もう一つは『一定時間内に二連続で、攻撃をあてること』です。連携はパーティを、組んでないとできません。というより、危険なのでやってはいけません。これも、パーティメリットの一つです」


「ひとりだと。ひとりで技をつなげる連携攻撃しかできません』特定の組み合わせで、連携ができます。それから『パーティで使う場合、パーティ人数にも限界があります』なので、なかまを三〇〇人集めて、敵一体をよってたかって、ボコボコにしたりもできません」


 ララさんがいう。


「他にもルールがありますけど、今日はこの辺にしましょう」「もう皆さん疲れたでしょう」


「そういえば、『なで切りの別の使い方』を、きいてないですね」


「すいません。それは次回にしましょう」「テッシさんが、技を覚えましたのでそれを使って」


「分かりましたデス」


「あっそういえば、もう一つ」俺はあることを思いだす。


「なんですか?」ララさんが答える。


「パーティの組み方はききました。手を上げて、みんなでパーティーっていうアレです。でもパーティを抜ける方法を、きいてないんですけど」


「それは簡単ですよ」


「どんな方法ですか?」


「パーティぬけますね、といって魔卓を操作します」


 こんな風にと、ララさんはカチカチと魔卓を操作する。


「なんかドライですね……」

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