第7話

「あれがボイコット町か……ボイコットという言葉は翻訳するとであって――異世界語では、荘厳な理由でつけられた名にちがいない……!」



「あの町は、モンスターと戦うのをあきらめた人たちが、たむろしてる町だってよ」


「――そうなのか……ってか、なんでそんなこと知ってるんだ? さっき生まれたばっかだって……」


 俺はふり返る。


 妖精は巻物をひろげていた。


「このアイテムをつかえば、生命力を消費することで、この世界の情報が手に入るの」


「マジかよ。便利だな……」


「このアイテムはわたしの生命力的に、一日のしよう回数に制限があるけどね」


「それって。やべーんじゃねーの……?」


「時間で回復するから、問題ないナノ」


 なにか分かったような、分からないような……


 しかし、本人が平気だというのだから、平気なのだろう……


 ボイコット町がはっきりと見えてきた


 高いかべにおおわれ。その上にカラフルな建物が飛びでている


 なにか、おもちゃ的な印象をうける。


 まわりの気候もあいまって。


 にゅうわな、たたずまいをみせていた。


「しっかし。町に入る場所がわからねえな……」


「わたしが上空から探してくるよ」


「おお、サンクス」


 フェリリは飛んでいった。


 しばし待つことにしたが、フェリリは意外と早くもどってきた。


「この先すぐだね。町にむかって、右手側に歩いていくとあるよ。ひとが沢山いたナノ」


「あんがと」


 しばらく歩くと、壁のまえに看板が立てかけてあった。


「ボイコットの入り口。この先って書いてあるナノ。メートルになおすと、二百メートルほどだってよ」


「……ほんとすぐだな」


 もうしばらく歩くと、じょじょに人々がごった返し。


 ボイコット町の入り口らしきものが見えてきた。


 6


「ここから入るみたいだな」


「小冊子もってきたの」


「読んでくれ」


「えーっと。入場にはお金、千二百クリスタルが必要です。


 飛行ユニットは原則。


 許可されている場所をのぞき、飛行禁止です。


 飛行を制限する器具や魔法をつかってください。


 ヤキソバの世界の単位でいう。


 約ニキロ以下は、衝撃吸収魔法のてきおう後は、制限なしナノ」


 魔法とか書いてあるし。


 まわりに亜人らしき人もみえるが、おどろかない。


 フェリリが出てきたあたりで、もうさとってしまった……


 最初のころは、ゲーム大会でロボットが遠隔操作できて――


 そのロボでモンスターと戦い、世界を救うとか……


 そういう可能性も信じていたがな……


 正直。リアルバトルは、したくねえな。


「今のうちに金用意しとくか。お前も持っていてくれ。俺の金が盗難にあったとき、お前のもってる金がたよりだ」


 そういって。フェリリに、紙幣を五十枚ほど紙に包んでもたせる。


「わかった。お菓子たくさん買うナノ」


「ほどほどにな」


 しばらくして。俺たちの手続きになる。


 もちろん。フェリリが全部やってくれた。


 俺は門に足をふみいれる。


 門は高さが5メートル。奥行きが十メートルほどあって、


 レンガのような物を、層状につまれ、地面も同様につくられている。


 門内の通路では、兵士らしき人が目を光らせていた。


 門を出ると、すぐに商店がつらなり、店主が大声で客を誘致している。


「たべものを買ってくるナノ」


 たべものを盛ってもらい、フェリリはすぐ帰ってくる。


「俺にも少しくれ」


「いやナノ! これはわたしのナノ!」


 いや。もともとは俺の金なんだけどな……別にいいけど……


「この辺に宿屋あるか?」


「探してみるなの」


 フェリリは巻物で、探しはじめる。


「あるナノ、そこの角を曲がってすぐ――この辺の立地の相場からすると安いなの」


「宿は早めに確保しとくか。後々に来て満室だと困る」


 モンスターと戦うことになったら、宿は町の入り口に近いほうがいい。


 俺は角を曲がると、小奇麗ではあるが派手さもない。


 三階建ての宿へふみいった。


 正面に、受付らしきチリチリ頭の男性が、カウンターに腰かけている――


「……よし! フェリリ、受付を済ませてくれ!」


「分かったナノ!」


 フェリリは、俺に背をむけ飛んでいく――


 もはや、フェリリが主人で、俺が管理されてる側な気がしてきた……


 ――なんとなく間違ってないか……?


「ま、まて、やっぱり俺もいく……」


 俺が主人側なんだ……


 ここは威厳をみせなければ……


 フェリリは、何やら受付と話しあっている。


 俺が近づくと、こちらにふりかえり――いやそうな顔で、俺に自分の食べ残しの皿をさしだした。


「えっ」


「お腹いっぱいになっちゃって苦しくなったの……。もったいないから。のこりはヤキソバに食べて欲しいなの……」


 俺は胸をなでおろす……よかった。


 一瞬ついに俺のあつかいが、ペットのそれになったのかと思った……


「一日五千クリスタル、一ヶ月だと二万クリスタルらしいなの」


「一ヶ月でたのむ」


「わかったナノ」


 こんなの長期間とまるなら、絶対に一ヶ月のが得だろうと俺はおもう――


「二階の二一五号室に決まったの。わたしが代理人として、手続きをしておくから。ヤキソバは荷物をもって、部屋で待っててほしいナノ」


 ムシャムシャ


「これクソうめえ!」


「ちゃんと話を聞くナノ!」


 時計を見ると針が四本ある。


 よくわからないな……あとでフェリリに聞いてみるか。


 部屋にはいると、疲れがどっと出てベットに倒れこんだ――


 パッとみたところ。


 部屋にはベットがひとつ。背もたれのついた、イスがふたつ。


 背面や背もたれに、クッションのついた長イスがひとつ。


 コンロや、冷蔵庫らしきものもある。


 洗面所やトイレは部屋の外か。


 しばらくすると、手続きを終えたフェリリが、部屋へはいってくる。


 L字型で、足をひろげる形でイスにすわり。はなしかけてきた。


「部屋の鍵と宿泊証は、無くさないようにだって――あと夜の零時になったら、正面の扉は閉めるから、裏口から入って欲しいっていってたよ――それと三階は商店があるから、って話なの」


「宿屋の中に店があるのか……便利だな」


「それとお金や貴重品は、受付にあずけておくと安心だってよ」


「……出発前にあずけておくか」


「どこかへ行くナノ?」


「寝るところも確保したし――せっかくだ。この辺のザコモンスターを倒しに行こうぜ!」

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