初めてのモンスター編
第8話
「モンスター倒しにいくなの?」
「おう。倒しにいく」
俺は高らかに宣言した。
「この世界で一番ザコな奴をな――」
「カッコい――くはないナノね……」
「格好とかどうでも良いんですよ。俺はそういう感情は捨てた」
「……冒険者協会支部へは行かないなの……?」
「……えっ」
「登録したりして。冒険に役だつ支援をしてくれる機関なの」
「……まだいかない……」
「えっ。なんで……?」
「モンスターをたおすのに、理由はいらないから……かな……?」
「たおす理由じゃなくて、協会にいかない理由なの……」
「……別に良いじゃないですか。最初から人にたよる人に、成長はないですよ?」
「まじめに言ってほしいの……もしかして。LVが低くて馬鹿にされるからなの……?」
「……この世界って、リアルでLVとかあるのかよ……」
俺は驚愕した。
そんなリアルカースト制度があるなんて……
「ごめん……オレいけねえよ……。嘲笑の目にたえられねえ」
「……格好とか、どうでもいいんじゃなかったナノ…t年?」
「俺は、すてた感情をひろいなおした――俺は人間になったんだ……」
「くたびれたマシーンのままでいいから。冒険者協会へ早くいこうよ……時間の無駄ナノ」
「……マジで、そこへいかなきゃ駄目なのか……? LV二になってからでよくね?」
「どうせいくなら早くいこうよ。こわいのは最初だけなの!」
「LV二になったら、絶対――絶対いくから! 俺うそつかないから!」
「わかったナノ。いまの録音したから」
カチッ。
『LV二になったら、絶対――絶対いくから! 俺うそつかないから! ウヒーッ』
「おい! 変な声がはいってんじゃねえか!」
「わたしが窓際にいるから。外の人の声がはいっただけなの――早くLVを上げて、とっとと冒険者協会にいこうよ」
俺は、金を全額カウンターにあずけ。
箱を背おい。
宿を出て町の外へむかって歩きだした。
「『一番クソザコなモンスター』の居場所はわかったか?」
「郊外にいる。『ダサねずみ』っていうモンスターが弱いらしいなの」
「もよりか。それにしても。すげー悪意のある名前だな。誰がつけたんだか……」
俺たちは、郊外へ向かってあるいていく。
――やがて、郊外に到着した。
フェリリは手をひらにし、眉にそえて首ごとふり、まわりをみまわした。
「あっ、ネズちゃんいた。トップクラスに弱いらしいよ。『もっと弱いのいるよ』って主張する人もいるけど。町の近くにいてみんな倒していくことから、印象の強いザコモンスターらしいナノ」
巣をおもわせる洞穴のちかくに、巨大ねずみのモンスターがいた。
「巻物で調べるナノ! 『ダサねずみ』おもに二足歩行で、立ったときの高さは、一メートル前後。歩く早さは、人の歩行の半分くらい――前歯がでていて、前歯のよごれを常に気にしている――が、自分の舌がつく内側ばかりを気にしてみがき――汚れている外側はみがかない――メスは、前歯がきれいなオスが好みなのだが、オスはいっこうに外側をみがかない――内面ばっかりみがき、外面をみがかないオスをみて、誰かがダサねずみと名づけた。だってなの……」
「それ戦いに、あまり必要のないデータじゃね……?」
言うが早いか、俺は剣を抜きはらった――
銀の光線がなびくように、ねずみを切りつける。
敵も応戦。ほそくて短い手をうごかすが、攻撃がおそいし――相手のリーチが短すぎて、当たる気がしねえ。
「ダサねずみ LV三 HP六五〇 BP三五〇 だってなの」
「ん? それどうやって調べたんだ?」
俺は、フェリリの方を見ないできく。
「これを使ったの。生命力を使わなくても、人やモンスターの簡単なデータなら見れるナノ」
俺はフェリリの方を一瞥いちべつした。
箱に入っていた。電卓のような機器を使っている――。
「俺のステは?」
「ヤキソバ LV一 HP三一〇 BP一二〇 SP八〇 MP六五 だってナノ。ダメージは七、八、七、九」
「全然きいてねえな。それに切りつけてんのに、血もほとんど出ねえ……」
「ヤキソバも攻撃をうけても。血はほとんど出ないし、あまり痛くもないなの」
「……マジかよ」
「もうヤキソバの体は、元の世界の体じゃないの。手足が取れるということもないナノ」
「いろんな意味で怖いこというなよ……」
そのとき、軽い音がひびいた。
黒いマントの上から、敵の攻撃がかすったのだ――だけど、かるく当たった程度だし――マント自体もすれたあとが、付いただけだった。
「当たっちまった……。ノーダメで勝ちたかったのによ」
俺は続けて敵を切りつける――。
「百七十なの!」
「……もうそんなに削ったのか?」
「違うよ。さっきヤキソバがうけたダメージが一七〇。あとヤキソバのHPは一四〇」
「は?」
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