第5話 拙い愛

私は自分に出来うるあやゆるコトをした。

「ママ」しか知らないミナに、いろんな言葉を教えた。

いろんな行動を教えた。

いろんな愛を教えた。


拙くても、彼への愛を伝えた。


ミナはずっと不満そうだった。

何をしても、何を言っても。


「ママ……」


ただ、同じ目で、私の後を雛鳥のようについてまわる。

そんなミナの行動が、私を次第に苦しめていった。


(何も変わらないじゃない!)


時は5日過ぎていた。

私にはあと2日しかなかった。


(最初から、彼を蘇らせる気なんて、神には……!)


私はミナを無視するコトにした。


どうせ、

どうせ! と。


6日目の夕方、ミナが私に声を掛けた。


「ママは私が嫌いなの……?」

ミナがまともに喋った初めての言葉だった。


それが、より私を苛立たせた。


思い切り頬をぶった。


ミナは泣いた。

そして、笑ったの。


私はイケナイことをしたと思った。


これでは彼は戻ってこない。

そうも思った。


「ごめんなさい!」


私が抱きしめようとすると、ミナはスッと身をかわした。


「え?」


「ママが愛してるのは私じゃないよ……」

その不貞腐れた顔が、おかしくて、可愛くて、愛しいと思ってしまった。


「私、ちゃんとあなたを愛せるわ」

そして、今度こそミナを抱きしめた。


ミナはギュッと私の髪を引っ張り、

声が掠れるまで泣き続けた……。

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