こうもり

だあれもいらないんだ。私。

失うのが怖いから。


ずっと一人でいいんだ。私。

自分の時間だけが大切だから。


いつでもそう。

王様気分の私。


気が付けば一人

世界から取り残されている。


だあれもいらないとのたまいながら

全ての人に愛されたがる。


一人でいいと言い張りながら

仲間外れになるのは嫌だといきどおる。


面倒くさいなぁ。

絶対友達になりたくないタイプ。

あ、私友達なんて居ないんだった。


好きな物さえ日替わりで。

誰にどう嘘ついたのか

もう忘れちゃった。


目の前に居る人の好きな物が

私の好きな物。

目の前にいる人の嫌いな物が

私の嫌いな物。


これじゃ、まるで

なかまはずれのこうもりだ。


本当はそれ好きじゃないの。

本当はそれやりたくないの。

そう思っても誰にも言わない。

ニコニコ笑いながら、嫌いなことを、する。


そうまでするのに、顔を会せる機会が無くなれば一気に切り捨て、さようなら。



それで良いと思って生きてきたのに

どうして急に悲しくなるの。

どうしてこんなに疲れているの。

本当の私を分かち合える友達が欲しいの。

本当の私なんて、自分自身にすらわからないのに。


眠りの外ではいつも孤独が口を開けている。

寂しくて、寂しくて、たまらない。


孤独の淵で、ひっそりと息を潜めては

善人で頼れる女のふりをして、悩める宿主を待っている。


誰かの人生を覗かせてくれ。

他者と関わっているという実感をくれ。


そうでなければ。

そうでなければ、空っぽなのだ。


誰かの心の陰りにぽつんとぶら下がる事しかできない、虚しいだけの哀れなこうもり。


それが、私。










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