僕らの世界の哀しいルール

@arisuneko2

第1話 僕らの幸せは、誰かを不幸にして手に入れたものだ(聖也視点)

僕らの生まれた世界には哀しいルールがありました。


他人の不幸をポイントに、命が1年増えるのです。


最初の寿命20年、それだけあれば十分と、僕らは普通に生きていた。

ずっと傍で、支え合い、ほんとにささやか、微笑んで。


そして、ついに来たのです。

僕ら、ふたりの死ぬ日です。


教会で愛を誓い合い、僕らはKISSをしたのです。


時は過ぎていきました。

呼吸が止まってしまうほど。


命の終わりは来なくって、

代わりに彼女は泣きました。


「私が他人(ひと)を不幸にしてる!!」


僕らは気づいてしまいます。

僕らの幸せは、誰かを不幸にして手に入れたものだ。


笑う事の出来ない人もいる。

哀しい時に泣けない人もいる。

きっと、僕らを恨んでいる人がいる。

ささやかな幸せってなんだ。幸せは幸せだろう!?


そんな事に今更気づいた!!!!


僕らは幸せなんだ。

幸せだったんだ!


僕らは別れました。

そして、ひとりで生き始めました。

ひとりってこんなに辛いんだ!

最初のそんな気持ちは序の口でした。


離れて2年、僕は耐えられず彼女に逢いに行きました。

ふたりの思い出の場所、そこに彼女がいる気がしたのです。

滑り台のてっぺんで、彼女は夜空を見上げておりました。

声を掛けようとした、その時です。


彼女は滑り台を降り、僕に気づき手を振りました。


僕は……生まれて初めて彼女を憎みました。

なぜなら僕の隣を通り過ぎ、僕の後ろにいた見知らぬ青年に笑いかけたからです。


(え……?)


僕らはけして憎み合って別れたんじゃない!!

(僕以外の人と結ばれるなんて許せない!)


そう思った刹那、胸にズクンと痛みが走りました。


僕の体は透けていきます。

その時、思ったのです。


僕の死を知らないままに、僕の不幸で彼女が生きる。

(大嫌いだ!)

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