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 一時間目の授業が終わり、休み時間に入ると私の席にバンと手が置かれた。


「めぐみん! 分かってるわね?」


 声を掛けてきたのは、隣の席のゆんゆんだった。

 彼女は、紅魔族の族長の娘にして、文武両道の優秀な学級委員。


「いいですよ。ちなみに、今日の私の朝ごはんは何ですか? もうお腹がペコペコで」


「そ、そうなの? 今日のおかずは、私が腕によりをかけて作った……ち、違うわ! どうして私が負ける事が前提なの!? きょ、今日は絶対負けないから! 今日こそは、族長の娘として、私が勝って見せるから!」


 そして、私の為に毎日ごはんを作ってくれる自称ライバルだ。


 ゆんゆんはそんな事を宣言しながら、自分の弁当箱を私の机の上に置いた。

 私は代わりに、先ほど手に入れたポーションを机に置く。


「では、今日も勝負内容は私が決めさせてもらうのです。なにせ、仮にも族長の娘なら多少のハンデは付けてくれてもいいはずです。加えて、希少なポーションと弁当なんて、本来なら賭け金として釣り合いません」


「わ、分かってるわよ、今回も、めぐみんが勝負内容を決めてくれていいから!」


 なんてちょろい。


「では、勝負内容は次の発育測定で、どちらがよりコンパクトで、世界の環境に優しい女かを競うという事で……」


「ズルいズルい! そんなの、私じゃ絶対めぐみんに勝てないじゃない!」


 なっ……!


「自分で言い出した事ですが、人にそうまで自信満々に言われるとちょっと腹が立ちます!同い年なんですから、そうそう違いがある訳無いでしょう! どれだけ自意識過剰なんですかこの娘は!」


「痛い痛いっ! 止めて、勝負は発育測定のはずでしょ! そんなに血気盛んなら、体育の授業で勝負すればいいのに!」


 ぽかぽかとゆんゆんを叩いていると、他の子達がぞろぞろと保健室へ移動して行く。


 大丈夫、子供の頃に教わった、大魔法使いになれば巨乳になるという話は、長年調べた結果、あながち間違いではないと分かっている。

 魔力の循環が活発な事が、血行を良くして発育を促進するのか、里の腕利き魔法使い達は軒並み巨乳が多かった。


 ならば、現在クラス一の成績を誇る私が巨乳になる日も近いのではないだろうか。


 そんな事を考えながら保健室へと向かうと、ゆんゆんが慌ててついてくる。


「ねえめぐみん! そんなに自信があるのなら、普通に大きさ勝負とかでいいんじゃないかしら? あっあっ、先に行かないでよ……!」

 

 保健室に入ると、既に測定が始められていた。

 女ばかりのウチのクラスの中では、私が一番背が低い。

 しかし、これは栄養学的な物ではないかと思っている。

 我が家は、特殊な感性を持つ魔道具職人である父のおかげで、年中貧乏だ。

 日々の食事にも事かく生活が、私の発育に影響を及ぼしているのかもしれない。


「あら、あるえさんはまた成長したわね。クラスで一番じゃないかしら。はい、次は……。めぐみんさんね。……ええと、毎回言っているけど、背伸びしたり胸を張ったりしても意味はないわよ? 計測魔法を使うから、そうやって深く息を吸って止めていても、数値には何の影響もないからね?」


 私のささやかな抵抗も虚しく、保健室の先生に魔法で数値を看破された。


「うん。……その、めぐみんさんは、身長が少しだけ伸びたわね。じゃあ、その。次はゆんゆんさんで」


「やだな、また大きくなってたから、絶対負ける……。ああっ、やっぱり! また今日も、めぐみんに負けちゃった……、痛い痛いっ! ど、どうして!? 私、勝負に負けてお弁当も盗られる上に、どうしてめぐみんに叩かれるの!?」


「そんな事は、忌まわしい自分の胸に聞くがいいです!」


「め、めぐみんさん、ストレスは発育に良くないですよ!」


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