1-6
「爆裂魔法は最強魔法。その分、魔法を使うのに準備時間が結構かかります。準備が調うまで、あのカエルの足止めをお願いします」
俺達は満腹になっためぐみんを連れ、あのジャイアントトードにリベンジに来ていた。
平原の、遠く離れた場所には一匹のカエルの姿。
そのカエルは、こちらに気付いて向かって来ていた。
だが、更に逆方向からも別のカエルがこちらに向かう姿が見える。
「遠い方のカエルを魔法の標的にしてくれ。近い方は……。おい、行くぞアクア。今度こそリベンジだ。お前、一応は元なんたらなんだろ? たまには元なんたらの実力を見せてみろ!」
「元って何!? ちゃんと現在進行形で女神よ私は! アークプリーストは仮の姿よぉ!」
涙目で俺の首を絞めようとしてくる自称女神を、めぐみんが不思議そうに。
「……女神?」
「……を、自称している可哀想な子だよ。たまにこういった事を口走ることがあるんだけど、できるだけそっとしておいてやって欲しい」
俺の言葉に、同情の目でアクアを見るめぐみん。
涙目になったアクアが、拳を握ってヤケクソ気味に、近い方のカエルへと駆け出した。
「何よ、打撃が効き辛いカエルだけど、今度こそ女神の力を見せてやるわよ! 見てなさいよカズマ! 今のところ活躍してない私だけど、今日こそはっ!」
そう叫んで、見事カエルの体内へ侵入する事に成功した学習能力の無いアクアが、やがて動かなくなり、そのまま一匹のカエルを足止めする。
流石は女神、身を挺して時間稼ぎをしてくれているらしい。
……と、めぐみんの周囲の空気がビリビリと震えだした。
めぐみんが使おうとしている魔法がヤバそうなことは、魔法を知らない俺でも分かった。
魔法を唱えるめぐみんの声が大きくなり、めぐみんのこめかみに一筋の汗が伝う。
「見ていてください。これが、人類が行える中で最も威力のある攻撃手段。……これこそが、究極の攻撃魔法です」
めぐみんの杖の先に光が灯った。
膨大な光をギュッと凝縮した様な、とても眩しいが小さな光。
めぐみんが、紅い瞳を鮮やかに輝かせ、カッと見開く。
「『エクスプロージョン』ッ!」
平原に一筋の閃光が走り抜ける。
めぐみんの杖の先から放たれたその光は、遠く、こちらに接近してくるカエルに吸い込まれる様に突き刺さると……!
その直後、凶悪な魔法の効果が現れた。
目も眩む強烈な光、そして辺りの空気を震わせる轟音と共に、カエルは爆裂四散した。
凄まじい爆風に吹き飛ばされそうになりながらも、俺は足を踏ん張り顔を庇う。
爆煙が晴れると、カエルのいた場所には二十メートル以上のクレーターができており、その爆発の凄まじさを物語っていた。
「……すっげー。これが魔法か……」
俺がめぐみんの魔法の威力に感動している、その時。
魔法の音と衝撃で目覚めでもしたのか、一匹のカエルが地中からのそりと這い出た。
雨も降っていない上に水源もないこの平原で、太陽の下、このカエル達はどうやって乾かずに生存できているのだろうと思っていたが、地中とは予想外だ。
カエルはめぐみんの近くに這い出ようとしているが、その動作は非常に遅い。
この隙にめぐみんと共にカエルから距離を取り、先程の爆裂魔法で消し飛ばしてもらえばいいだろう。
「めぐみん! 一旦離れて、距離を取ってから攻撃を……」
そこまで言いかけて、めぐみんの方を向くと同時。
俺はそのまま動きを止める。
そこにはめぐみんが倒れていた。
「ふ……。我が奥義である爆裂魔法は、その絶大な威力ゆえ、消費魔力もまた絶大。……要約すると、限界を超える魔力を使ったので身動き一つ取れません。あっ、近くからカエルが湧き出すとか予想外です。……やばいです。食われます。すいません、ちょ、助け……ひあっ……!?」
俺は、アクアとめぐみんが身を挺して動きを封じたカエル二匹にとどめを刺し。
何とか、三日以内にジャイアントトード五匹討伐のクエストを完了させた。
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