凛と伊織の場合Ⅱ

 待ち合わせまではまだ少しあったが、伊織は目的地に向かう事にした。

 「凛の事だからたぶんもう着いてるだろう。」

 昔から、待ち合わせ場所に1番先に来るのは凛だった。どんな時でもそう。誰が相手でもそうだった。

 

 「いつも何分前からいるの?」

 あまりにもいつも先にいるので1度そう聞いた事がある。

 「んー。最低でも30分前にはいるかなあ。2時間前とかに来てお茶飲んでたりする事もあるよ。」

 そう言って凛は笑った。

 ── なんて無駄な時間の過ごし方だろう ── そう当時は思ったものだが、付き合いが長くなるにつれ、なんて凛らしいんだろう、と思うようになった。彼女は昔から無駄を恐れない。いや、恐れているからこそ無駄を大切にしているのか・・。


 

 待ち合わせに使ういつもの場所、赤いオブジェクトの前。

 グレーの膝丈のワンピースを着た凛が立っていた。

 ─ さすがに昔みたいな変な格好はしてないか ─ 昔、よく凛が突拍子もない格好をして待ち合わせ場所に現れ、皆んなを驚かせた事を思い出し、笑いがこみ上げてきた。(ちなみに変な格好というのは、下着が見えそうなくらいの丈のミニスカートに真っピンクの肩の露出したTシャツ、とか、真っ黒でくるぶし近くまで丈のあるコート、とか、そういうの)

 月日が経つって面白いな、なんて思いつつ凛の元へ歩いた。


 どうでもいいが、久しぶりに会う友人への第一声は緊張する。

 元々人見知りとは程遠いタイプの人間ではあるが、親しい仲の人との再会はなぜか緊張する。声さえかけてしまえば、いつものように話せると分かっているのだけれども・・。何と声をかけようか。



 「久しぶり。」

 結局だが、この第一声になった。

 

 「久しぶりだねー、伊織!」

 昔と変わらない(いや、昔よりは少しふっくらとした)凛の笑顔が伊織を出迎えてくれた。


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