第42話-最後の晩餐

白鳥 八熊が、明日のことを予知できたという事は、白鳥 八熊が「明日死ぬ夢」を見たということになる。

しかし彼は冷静だった。

ここで冷静さを欠けば、結果として自分の生存率が下がるからだ。




久屋 錦の異能力で、自信の能力の半分を米田 豆子に貸与している白鳥 八熊は、自身をタイムリープの対象に指定出来ない。

自身が死んでもやり直すことができるのは、誰にも貸与していない状態の時だけである。

逆に、誰にも貸与していない状態で見る白鳥 八熊の予知夢は、死亡する時刻や場所、それ以前の数時間の記憶に至るまでが鮮明に映し出される。

協力者さえいれば、その死を回避できるのだ。



白鳥 八熊が死ぬのは、午後2時丁度。

場所は池下のとある路地で、死因は見えない位置からの日本刀による斬撃。

そのタイミングで、久屋を含む全員は このBARにいる。

つまり白鳥 八熊は、敵が襲ってくるタイミングを知るための「架空の囮」となったのだ。



ヒデヨシを倒すだけならば、誰1人としてBARから出さず、米田 豆子への貸与もやめ、白鳥 八熊が一人で何度も明日をやり直して倒せば良い。

しかし敵が警察を味方にしている以上、私達は敵を殺すわけにはいかない。

捕らえた上で、能力を無効化する。

もしくは…奪わなければならない。


それができるのは、久屋 錦の能力である。

触れなければ発現できないが、久屋 錦が白鳥 八熊よりも早く死ぬ分には、何度でも明日はやり直せる。

磐石に見える作戦だが、白鳥 八熊だけは死ぬわけにはいかない。


敵の斬撃のタイミングや、予測される敵の立ち位置を説明し、そして…

作戦の鍵を握る少女の手に、久屋 錦はゆっくりと触れる。



彼女が奪われれば、名古屋は…いや、世界は終わりを迎える。


久屋 錦は、彼女に秘められた力の一つを、神戸 灘と名乗る男に貸与した。


…おわりの戦いの、はじまりだ。

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