第10話-みえないおわり

朝八時。

今回は二度寝などせずに、真面目にこのループから抜け出す方法について考えてみようと思う。

しかし目的地を変えずに、栄から帰らないルートでは、どうしても「あのセリフ」を聞いてしまう。

あのセリフを遮ったとしても、ダメなのだ。

つまり…買い物が終わった後から、夕方までの時間に、何かをしなければならない。

そんな事はわかっているが、このループを続ければ続けるほどに何をすればいいのかがわからなくなる。





…今回は、迎えに行くことにしよう。

それでも、「あのセリフ」が止まるわけではない事は、わかっていた。











フラリエは、私の家の隣で、母親と2人で暮らしている。

なぜ親戚の家に行くことになるのかはわからないが…色々と事情があるのだろう。






「今日」のモーニングは、コメダ珈琲店にした。

フラリエの口にトーストを入れ、頬張る姿を見るのもこれで何度目なんだろう。




セントラルパークでの買い物も済ませ、地下街を歩く。

名古屋の地下街は、広大だ。

覚えてしまえば、地上を歩くよりも楽に移動もできるし、車に轢かれる心配もない。

雨にも濡れることはないし、今日のように寒い日でも、地上よりは幾分か暖かい。


しかし…目的を達してしまうと、いわゆる遊べる場所 というのが少ないのが名古屋の辛いところだ。

フラリエは、何をしている時が一番楽しいんだろう?


「…フラリエ、ちょっと移動しようか。」


「うん、どこに行くの?」


「伏見で、食べたいものがあるんだよね。」


「いいよ、行こう。」



昔は、電車に乗るのも怖がって私にしがみついていたフラリエ。

今はもう、1人で何でもできる。

私と一緒じゃなくても大丈夫だから、離れて行くのかな?


…でも、それなら何故 こんなにも「今日」を過ごすの?


私は信じていた。

何か引き止める方法があるからこそ、私は何度だって今日を生きているんだって。


あぁ、でも

本当に見えないよ。

見えないって、わからないって、こんな気持ちなんだね。




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