第10話 冠婚葬祭をしました1

二日後、爵位を継承するための儀式をするために、王宮へ向かった。


手続き自体は前日に役場で終わっているので、現時点で辺境伯を名乗るのは違法ではないのだが、この継承の儀式をする事は法に明記されているので、やらないと罰せられる。


儀式の時間は七つ四半刻14時30分頃から行う。という事なので、七つ刻の鐘が鳴るくらいに向こうに着けば大丈夫だ。





この国の事を説明すると。

この国の名称は【ザルヘルバ王国】である。政治形態は立憲君主制。だけど、一般的な立憲君主制と違い、議会の議員は民主的な選挙では選ばれず、国王の権限が法律で多少制限される程度の緩い物である。


基本的に議員は世襲制であり、議員=貴族なのだが、封建的な制度の様な物は無い。

王国は、20の州と29の辺境領からなる王国とあり、州とは、人口三十万人以上の領地で、辺境領とは、人口三十万未満の領地である。

と法律で決められている。


王国の領土は全て直轄地であり、領地を治める貴族は代官的な意味合いがある上に自前の軍隊、言わば私兵を原則的に持てない。

とあるので、持てる場合が有る。

それは、その多くが隣国と接している辺境領である。


辺境領は、そのほとんどが王都より離れているので、いざ国境侵犯等の有事が有っても、国軍は直ぐに向かえない。


辺境領にも国軍は居るが、法律で領地の総人口の1%までと決められているので、有事の際は足りる訳がない。


何でこんな法律が在るのか理解に苦しむが、制定されてから200年以上経っているので、今後も変わる事は無いだろう。


なので、50年ほど前に新法が制定した。

新法のおかげで辺境領では、有事の際に限り、国軍とは別に総人口の4%まで兵を雇用する事が出来る様になり、有事の際により柔軟な対応が出来る様になった。


ちなみに、リルの領地であるリネルメ辺境領は、王都から徒歩でも一、二日しか掛からないので、この法律の例外扱いになってしまっているので、領民9,000人そこそこのリネルメ辺境領には90人ほどしか国軍が駐屯していない事になる。


辺境領リネルメは、地理的な観点で言えば、西を隣国と接しているので、新法の例外的措置は本来あり得ないはずなのだが、隣国は共和制国家であり、ザルヘルバ王国とは国交100年を超える友好国なので、新法の例外とされたのである。

なので、領兵が100人足らずしかいない中でも、30人もの領兵を護衛として引き連れて来ても問題無いのである。


(待つのはキツいなぁ・・・ターシャは恋ばな出来ないし、駄精霊どもは・・・論外。誰かいろいろ話せる相手が欲しいわよねぇ・・・)





ゴーン・・・・・・ゴーン・・・・・・


(ようやく七つ刻の鐘が鳴ったわ。準備は出来てるしそろそろ行こうかなぁ)

あたしはおもむろに立ち上がる。


「セバスチャン。そろそろ王宮に行きますよ」


「承知致しましたお嬢様」

あたしは、セバスチャンを伴い、王宮に向かった。





王宮に到着すると、守衛に話を通し、そこで待たされる。

しばらくすると、中から係の文官が迎えにくる。

その文官の案内によって少し広い部屋に案内される。

奥の方が二段ばかし高くなっており、その中央には玉座っぽいものがある。


(ここが謁見の間・・・という訳では無さそうねぇ。部屋が想像してたのより、圧倒的に狭いし、玉座も多少質素な感じがするわ。だから、おそらくは継承の儀式みたいな事をするための部屋って感じねぇ)

あたしは、不審に見えない程度に周囲を見回す。


それからしばらくすると、文官でも位の高そうな人が入って来る。


「リネルメ辺境伯の継承式を受けに来たリルーエット・リネルメで相違ないですかな?私は、この国で宰相を任されている、ロアン・ライデルです」

(宰相が出て来るとか・・・そういう物だと思っておこう)




儀式も終わり、王宮から出て来ると、そこには、セバスチャンとマチルダが待っていた。

「お疲れ様でございます。お嬢様」


「お疲れ様です。お嬢様」


二人がリルに労いの言葉を掛けると、そとで待っていた護衛の領兵と合流し宿に向かった。





「おめでとうございますお嬢様。晴れて辺境伯を名乗れますねぇ。お嬢様の晴れのお姿を旦那様にも見て頂きたかったです」


(泣くなよセバスチャン。確かに父ちゃんに見てもらいたかったなぁ・・・)

その後、ささやかながら宴会をした。


(あぁ疲れた。明日も忙しいし早く寝よ)


あたしは、疲れた体をベッドに横たえ意識を手放した。




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