第7話 ─談─
「后様が、わかりません」
会合があって以来、晴明と舞苺は何度か会っている。
小さい頃からの后を知る舞苺は、晴明としては「別に興味があるわけじゃないけど后様の事で役に立つから仲良くした方がいい気がする」という部類にはいる。
舞苺は察しがいいので、晴明が后に抱く感情などすぐに気付いた。
舞苺によって半ば強制的に、晴明が相談をしている(させられている)のである。
「わからないって?」
「…今まで后様は、鈍臭くて天然で騙されや
すい、ただの鈍感バカと思っていました。
──けどそれは違った。
闇世界の頂点を継ぐ者である。
それだけで彼は苦悩すらしていたのに、
6歳なんて小さい頃からオモテの頂点だった
なんて、到底信じられません。
─────それこそ負担になりすぎる。
けど后様は顔色一つ変えずに会合で上座に
座し、当主としての役をこなしていました
───基本座るだけですが。
それで、后様が本当は強いのか、弱いのか
わからないんです」
「どう、なんだろうね…
舞苺は、后は頑張ってるなぁと思う。
1回、聞いたことがあるの。
その時后は、自分は弱いよって笑った」
「──笑った…?」
「うん。凄く、自嘲的な……暗い笑顔だった。
后はね、自分はものすごく弱くて周りに押
しつぶされそうで怖くて、…………自分で
も破れないような“強い自分”を作ってしまっ
たんだって、笑ったんだ」
「そんなこと……」
「后はね、舞苺の事、本当の“お姉ちゃん”だっ
て思ってくれてる。だからこれは、后の本
音だと思う。
でも舞苺に后を助けられる力は無いの…あ
の后の弟くんにも。
きっと彼にも無理…彼は后を、全ては救えな
い」
「私も、同意ですよ。主神言…悪魔に后様を
救えるなど、言語道断」
「少しは救えるとも思うけどね…きっと舞琴
にも舞音にも無理。だからこれは2人にも教
えてないの」
「少しは…?彼女達でも無理とは…」
「彼らは“弟”“妹”だ。その存在は、后を苦しめ
る原因にもなる…“兄”である事が、負担にな
るんだ。だから、少ししか救えない」
「……………」
「きっと私にも無理。姉だから」
「……………」
「后を救えるのは、貴方しかいない」
「私、しか…?」
「そう。后の負担になっていない、身近な
人…貴方しかいないでしょう?」
「青龍甘雨や、朱雀華は…?」
「彼らにも無理よ。救えるだけの気持ちはあ
るけど、力は無い」
「…………」
「だからお願い、后を救って……救ってあげ
てください」
「……私はそのつもりですよ………手段が、
わからないだけで…」
「なら、きっと平気。
──后の、天后になるの」
「………え?」
「闇皇…御門さんもきっと同じ考えだと思う」
「……わかってますよ」
「…………………」
「私が、后様を救います。当たり前です。
───側近、なめないでくださいね」
「……うん。応援してるね」
この、何もかも見透かしたような視線は嫌いだが
「…ありがとうございます」
とりあえず、后様優先だ。
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