第3話 ─桜─

后は舞苺にかけ直すか悩んでいたが、到底無理だ。華と破と甘雨はまだいいが、

此処にはドS側近兼教育係の晴明とメガトン級最強ブラコン弟の言がいる。

なんて考えていると再び后の電話が鳴った。

「我が皇子、電話鳴ってるよ?出ないの?」

「昨日の人か?」

「ん……うん」

「昨日も掛かってたんですか?」

「うん」

「兄さん、出ないでいいの?」

「急ぎの用事かも知れないよ?」

「んー……」

…確かに、急ぎの用事だろう。

会合は明日か、早ければ今晩あるのだから─

そうしている間に、電話は切れてしまった。

「切れましたね」

「切れたなー」

「もう…次掛かったら出なよ?」

「…はーい」

そうしてしばらくだらだらとしていると、

本日2度目の電話が掛かってきた。

「我が皇子」

「うるさいんで早く出てください」

これはもう、出るしかない。

どちみち、出ない方法など端から無いのだ。

「もしもーし…」

『あ、やっとでた』

『え、出た!?お姉ちゃん、貸してー!』

『もー、こーちゃん、騒がない!!』

『舞音も、声大きいよ…』

『そうだよ、舞音!』

「舞琴が一番うるさい」

『ごめんなさい、お姉ちゃん。

 まぁ舞音はこーちゃんより静かだけどね』

『お兄ちゃん、お姉ちゃん、ごめーん!

 でも舞琴の方が舞音より静かだもん!』

「うるさいあほ。舞琴も舞音も同じだバーカ!!

 強いて言うなら舞琴の方がうるさい!!!!」


聞いたこともない様な后の暴言に引く一同。

親戚と話すような(現に親戚と話している)親しげな話し方には、もはや若干焦っている。


『え、お兄ちゃん酷い!』

『ほら、こーちゃんより舞音の方が静かー』

『后はどっちもうるさいって言ったでしょ!

 ……いつもごめんね、后』

「いや、姉ちゃんはいつも静かだし全然」

『なにそれ、舞琴と舞音うるさいってこと!?

 お姉ちゃんだけ静かとか、差別!!』

「当たり前だろバーカ、いっつもうるせーし!!

 さっきから散々言ってるじゃねーか!

 ていうか、さっさと本題入れ!!!!」

『わー、女の子に暴言、はんたーい』

『舞音もこーちゃんにさんせー、

 暴言はんたーい!』

『もういいから本題入ろうよ…?』

「…なんか舞苺ごめん…

 で、会合の事だよな?」

『全然大丈夫だよ。舞琴と舞音謝りなさい』

『ごめんなさーい』

『ごめんなさい、お兄ちゃん』

「もう、いつもの事だしいいけど…」


周りはいつもの事なのかと驚きを隠せない。

言と晴明の食いつき様は、もはや怖い。

そして全員、“会合”とは何なのか

気になって仕方がない様で落ち着きがない。


『うん、会合』

「日は…今日?明日?」

『明日の方が良いかな?

 后も準備しやすいだろうし…』

「んー、そうだと有難い…かな?」

『じゃあ明日だね。月も明日がベストだし』

『あ、話かなり進んでるじゃんー!!』

『こーちゃんと舞音、放置…ひどいー!』

「お前らが“どっちの方がうるさいか”とか

 争ってるからだろ、いつも通り」

『そーそー。ちょっとは黙ってなさい。

 ──それで、比紗さん今回は来るの?』

「んー、帰ったら聞いてみる」

『りょーかい』

『あのねお兄ちゃん』

『今回から10周年記念で新しい衣装だから』

『楽しみにしといてねー!』

『だって。舞琴、舞音が。』

「お………おう…」


衣装───会合で后が身につける衣類は、

いつも舞琴と舞音が準備をして、

着替える時も舞琴と舞音が手伝う。

2人が作る衣装は

ひらひらしてるか ふわふわしてるか もしくは両方か の三択であるため、

后としてはあまり喜ばしくない。


『まぁ、そういう事で。

 ──2人とも、言っとくことない?』

『無いよー!』

『舞音も、無いよ!』

『それじゃあね。明日桜樺おうか殿で待ってる』

「うん、ありがと。じゃーな」

『はーい』

『ばいばーい!』

『また明日ー』

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る