4-3

「ッ……!」


 覚醒する。気がついた時には世界は変化していた。

 正確には自分が認識する現実と言う概念の中に戻された、と言うべきだろうか。

 息が荒い。荒い呼吸を肩でしているのが解る。

 鼓動が激しい。心臓が暴走でもしているのではと言う位に動悸を続けている。

 身体の異常に蝕まれながら汗に濡れた顔で辺りを見回す。

 すっかり見慣れた部屋。荷物も殆ど無いここしばらく寝起きしていた部屋。

 何の変哲も無い、『学校』の自室だった。

 自分の居場所を理解しても混乱が治まらない。全て元に戻っている筈なのに。


「夢……?」


 漸く言葉らしい言葉が紡がれる。

 体は寝汗でビショビショで、下着どころか寝巻までもが汗で濡れていた。

 尋常ではない己の状況。

 たかが夢一つでここまで人は追い込まれてしまう物なのだろうか。


「また……あの、知らない男の子の……夢」


 こんな状況に陥ったのは、今回が初めてではない。最近は毎日この様な状態が続いている。


 ――夢。内容は朧げだが、背中を追いかける夢。


 内容は毎日同じ。最後には必ず闇に堕とされ、そこで目が醒める。

 会った事も無い筈なのに、どこか愛おしさを覚える少年。その背中を追う自分。

 そこに微々たる変化もない。そんな夢を、ほぼ連日の様に見るようになった。


「何で。何なのよ、一体……」


 呼吸は未だ落ち着かない。


「これは何かの罰だとでも言うの……? 私があの子に嘘をついてしまったから?」


 少女、ジュライに嘘を教えてしまった事に対する天罰だとでも言うのか。

 全てはあの兎の死から始まった。以来、眠りにつくとこの夢に取り憑かれる。

 そんな、眠れない夜が何日も続いていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る