自称死神くんと約束
グツグツとお鍋の中で昨日作ったビーフシチューを温める。朝からこってりしたものは嫌だけど、今日は土曜日だからいいとしよう。
「海堂さん海行きましょうよ、海」
「君はどうして当たり前のように私の家にいて、デート特集が組まれている雑誌を読んでるのかな」
テレビの前のテーブルに広げられた雑誌。ご丁寧に行きたい場所などには付箋で目印をつけてあった。そんな雑誌を読むのは自称死神くんの山本くんです。
「海堂さんの水着は私から選んで差し上げますね」
「海行かないよ、きっと仕事で夏休みなんてないよ」
「えっ」
あり得ない、と言いたげの山本くん。ごめんね、現実なんだ。漫画とかみたいにホイホイ休みが取れてたら私仕事なんかしてないよ。
「それじゃあ、僕とのハワイ旅行もないんですか…っ!?二人っきりでホテルに泊まって、そのまま愛を育むハワイ旅行は…っ!?」
「待って。何がどうなってそうなったの」
山本くんはやっぱり頭いっちゃってる子だ。はあ、とため息をついてから山本くんを見れば彼は部屋の隅っこで体育座りをして、ぶつぶつとお経を唱えているみたいに何かを言っている。そんなにショックだったのか。そう思うとなんか悪いことしちゃったな。
「……でも、お盆休みとかはあるはずだからそのときくらいなら行けるんじゃあないかな」
「本当ですかっ!!?それなら、予定空けておいてください!出来れば二泊三日がいいです!!!」
「お盆休みってことは世の中のお父さんたちもお休みだから、泊りなんて苦しいと思うけど」
「うっ……!そ、それなら、せめて海だけでも!」
「海も同じじゃないかな」
「じゃあ、プール!!」
「同じだと思う」
うぅ、と小さく唸り声をあげると彼はあり得ないことを言い出した。
「それなら、海堂さんの家で泊まりましょう!!!!」
だから、なんで私の家なの。そう思いながら、またため息を着いた。
「無理だって前にも何回も説明したよね?」
「一晩だけでも…っ!」
うるうると瞳を潤ませ、お願いというポーズをとる山本くんは結構策略家だと私は思う。どうやれば私がYesと答えてしまうのか彼は知っているのだ。つまり、私が言いたいことはお盆休みに彼の宿泊を許してしまった。しかも、二泊三日。なんていうことだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます