魔王からの招待状⑧
取り逃がした――。
(…………ってこと……?)
閉ざされたビルの屋上に立ち、要は日常に戻った空間で遠くなる炎を見送っていた。
要はまだ治まらない動悸を静めるように胸に手を当て、大きく息を呑んだ。
(今のが……!)
先ほどの怒濤のような一連の出来事が、光明による
魔障を見送っていたタマは、懸命に状況を把握しようとする要の隣に立つ。
「競り負けました。結界を解いて魔障を逃さなければ至近距離にいる光明さんが危ない。魔障は結界を嫌いますから解けばまず逃げます」
光明の安全のために、タマは当然判断を下さなければならない。
結界を解くと同時に屋上へ合流した光明は、糸が切れたように膝をついた。
「駄目だった……! また……!」
「光明」
美優が心配そうに寄り添い、屈みこんだときだった。
「なるほど。あれが原因ですか」
四人しかいなかったはずのビルの屋上に、見知らぬ男の声が聞こえた。
光明が跳ねるように立ち上がり、美優と要が勢いよく振り返る。
いつからいたのか、どこから入り込んだのか。
閉ざされた屋上に忽然と現れたのは、
濃紫の衣に黒の略式の
僧侶は笠を外し、隠された面を露わにして光明の前に立つ。引き締まった輪郭と鋭い眼光が隙のなさを感じさせる、二十代半ばの痩身長躯の男だ。
男は光明に向け、ゆっくりと一礼する。
「総本山
「本山から……」
目を見開いた光明の顔から色が消え、声がかすれる。側にいた美優が息を呑む気配がして、要は視線でタマに問うた。
猫のように側へ寄ってきたタマは、面倒そうな声音でささやく。
「気づかれましたね」
「どういうこと?」
つられて小声で問えば、タマはあごをしゃくった。
「ずいぶん前ですが、新聞に書いてあったでしょう? 有識者で自然発火の原因解明に当たると。アレに呼ばれた一人が本山の関係者だったんですよ」
それがいったいどういう意味を持つのか分からない要の前で、恵翔は鋭く光明に視線を留める。
「
「なっ……!」
一斉に身じろいだ光明、要、美優を黙らせるように、恵翔は先んじて言った。
「大僧正は市の皆様に被害が出ることを憂慮されておられます。こうして事件が大きくなりつつある今、私はあなたの監視だけでなく、場合によっては拘束するよう命ぜられました」
「――!」
絶句した一同に向け、冴え冴えとした声が響いた。
「大僧正はあなたのみならず、
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巡る世界の黙示録 少女戦隊ドリーム5/小椋春歌 ビーズログ文庫 @bslog
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