第5話
七月
うだる様な暑さの中、体育の授業中李緒華が倒れた。
どうやら日射病のせいらしいが、先生がなんだか深刻な顔をしていたのが気になった。
僕と李緒華の仲を知ってか、僕も保健室に行くことを許可された。
保健室の先生に事情を説明し、李緒華をベッドに寝かせた。
今日の残りの授業が体育だけだったので李緒華の体調が良くなったら帰っていいとの指示が出た。
幸い軽い日射病のおかげか、救急車を使う必要もないとの事だ。
李緒華はずっとうわごとで僕の名前を呼んでいた。
こういう時彼氏だったら手を握ったりするんだろうけど
そういう事をするわけにもいかず、僕はずっと李緒華の苦しそうな顔を見つめていた。
わかっている。
李緒華は僕を「友達」と思っている事を。
未だに李緒華には親友と呼べる女友達はいない。
だとしたら初めて友達になった僕に頼るしか無いんだろう。
僕は友達として、李緒華に出来ることは無いんだろうか。
李緒華が辛い時、苦しい時、僕はどこまで、何をしてやれるんだろう。
何もできない自分が、なんだかもどかしく思えた。
最後の授業のチャイムが鳴る。
「先生さ、これから職員会議があるから具合良くなったら帰っていいからね。今のうちにその子の荷物とってきてあげたら?」
保健室の先生がニヤニヤしながら言う。
「はぁ・・・じゃあちょっと取ってきます。」
この先生、少し苦手だ。
一度李緒華の方を向く。
倒れた時よりは幾分か顔色や呼吸が良くなっていた。
保健室を出て教室へ向かう。
部活に行く者や居残っておしゃべりをするグループで廊下や教室は溢れかえっていた。
僕の教室はまだみんな着替えのため更衣室にいるせいか
誰も残っていなかった。
クラスメイトが戻ってくる前に李緒華の荷物を持って保健室に戻りたかった。
僕らが仲のいい友達とはいえ、ここまですると変な噂をたてられて李緒華に迷惑がかかると思ったからだ。
急いで机の横に掛けてあった鞄に、机の中の物を押し込める。
急ぎ過ぎたせいで、机の中のプリントをばらまいてしまった。
「だー・・・クソ・・・」
落ちたプリントを拾う。
ふと目にしたプリント。見たことのある文章が書き出されていた。
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