第4話
それからの僕らは、また同じように平凡な日々を過ごしていた。
僕らは、と言うと語弊がある。
僕だけが、少しずつ李緒華の事を意識し始めていた。
李緒華は、英語と家庭科の授業が好きで(実習で作ったものを食べられるかららしい)、チョコやミルクティーなどの甘い物に目がなく、休みの日はいつも家にいるらしい。
BLACK LILYのメンバーはボーカルのメルが好きで、ライブには行ったことがなくいつもCDを買っているという。
体育の授業はほとんど休んでいて、聞いたところ元々体が丈夫ではないみたいだ。
それを聞いたせいか、BLACK LILYのライブには行けそうにないなと、自分の中で納得した。
僕と李緒華が好きなバンド、BLACK LILYはインディーズバンドだけれど、集客数がすごいため近々メジャー入りするんじゃないかとファンの間でも噂されている。
わかりやすく言うとビジュアル系バンドだが、化粧もそこまでゴテゴテにしているわけでもなく、一般層にも聴きやすい楽曲が多いため僕みたいな男性客もかなりいる。
李緒華は結成当初から応援しているらしいが
ライブに行けないことを申し訳ないと思っているそうだ。
BLACK LILYの話題が出ると、李緒華はとても嬉しそうな顔をする。
まるで自分のことのように。
「メルさんがあの声であの歌詞を歌うのが好きなんだ。」
歌詞は、特別変わったものではない。
だからこそ僕でも入り込みやすいのだけれど。
「僕、あの曲が好きだな。ナイトキャンドルだっけ?
ブラリリにしてはおしゃれな感じの曲だよね。」
「わかる!あの曲すごい好き!!トランペットとかチャイムが入ってて今までに無い感じだよね!でもあの曲不倫の曲なんだよ?知ってた?」
「そうなの?恋愛の曲だとは思ってたけど、そこまではわからなかった」
「あれはねー男の方が既婚者なんだけど、いつも男が帰る時の女の方の悲しさを歌ったものなの。別れたいのに別れられなくて、男の残り香やタバコの吸殻を見るたびに寂しくなる気持ちなんだって。」
「へー・・・すごいな、それなんかに載ってたの?」
「え・・・あーうん、なんかの雑誌のインタビューだった、かな?」
「よくそこまでチェックしてんなぁ」
「大好きですから!!ブラリリ!!」
そんなやり取りがずっと続いていた。
この間からの気持ちに嘘は無いけれど、今は李緒華とこうやって過ごせるだけで、嬉しかった。
だけど僕は、まだ李緒華の表面上の事しか知らないんだと
薄々感づいていた。
でも無理矢理聞くことでも無いし、いつか李緒華から自然と話してくれるまで待ってみようと思った。
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