寄り道1
「こーちゃん、こーちゃん、あーそぼ」
わたしはこーちゃんの家のドアを叩く。
こーちゃんは同い年のお隣さんで男の子で、気づけばいつも一緒にいる。
きぃ、とドアが開き、中からこーちゃんが出てきた。
「遊ぶったって何するんだよ〜ここらへん遊ぶとこないじゃん」
「散歩〜!」
「それ、遊びじゃない」
げんなりした顔でこーちゃんが言い返す。いつの間にそんなおっさんみたいな顔をするようになったのだろう。
「何言ってるの、こんなにいい天気なのに外に出ないなんて…もやしになっちゃうよ〜」
「もやしおいしいよ?」
わけがわからない。
わたしは嫌がるこーちゃんの手を取り、無理やり外に引っ張り出す。
今日は澄み切った青い空が広がり、空気がぽかぽかしてるかんじだ。
かふんが多いらしいが幸運なことにわたしもこーちゃんもかふん症とやらではないようで全然平気だ。かふん症の人はなんてかわいそうなんだろう。
こんな天気のいい日に楽しく外を歩けないのだから。
「ねぇねぇ、みてみて!空!めちゃくちゃ長い雲!」
「え?あぁ、ひこうき雲っていうんだって。ひこうきが引き連れてくんだよ。」
「へぇ!ものしりこーちゃんだ!」
「へへへ、ちなみにこんなにくっきりひこうき雲が残ったら次の日は天気が悪くなるんだって。」
「え、じゃあ明日は雨なの?」
「そうだよ、さーちゃんの好きな散歩もできないね。」
にやりと笑ってこーちゃんが意地悪を言う。 わたしの横をすり抜けて少し先をこーちゃんは歩き出した。
「こーちゃんはきらいなの?散歩。」
少し心配になって前を歩く背中に聞いてみる。
唐突にこーちゃんが振り返ってわたしをじっと見つめてきた。
「別に、きらいじゃないよ。」
気づけば海の近くまで来ていた。家からはなかなかの距離を歩いていたようだ。海が光を受けて、まぶしくて、目を閉じた。
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