双子のハンガー

 昼下がりにマリが家を出ると、物干竿に同じ顔をした女の子がふたりぶら下がっているのが見えました。彼女たちは双子で、人間の姿をしたハンガーです。


 ふたりは洗ったばかりでびしょ濡れの制服を着せられてぶら下がっています。マリが「さむくないの?」と訊くとふたりは口をそろえて「さむくないよ!」と言いました。「ハンガーなのだから、当たり前ね」と思い、マリは双子のハンガーに手を振って、街へ出掛けました。


 マリは『名曲が及ぼす影響』という本を買いに行くところだったのです。

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