独りカラオケ

 マリはひとりで薄暗いカラオケに来ています。個室は1畳半くらいの広さしかなく、テレビは旧くて小さくて、電源が落ちていました。入って来た扉の近くに様々な配線が繋がったスイッチがありましたが、どれがテレビのスイッチなのかわかりません。マリは「これ、押してみる」と一人で呟いてスイッチをひとつ押すとテレビが点いて、画面にはなにかの歌の歌詞とアニメーションが映し出されました。音は無く、映像だけが流れています。


 映し出されたアニメの主人公らしき女の子は火の波が立つ海の中を岸へ向かって歩いていました。岸に仲間らしき人々が見えて女の子は喜んで走りましたが、なぜか結界のようなものが邪魔をしていて女の子は海から出られず、火の波はどんどん迫ってきます。それをマリはしばらくぼんやりと観ていました。


 観ている途中で用務員のような格好をしたおじさんがマリが居る部屋の扉に近づき、中を覗き込んで薄ら笑いを浮かべたのが見えました。

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