使用人の恋
マリはある大きな日本家屋のお屋敷に、使用人として仕えていました。お屋敷には可愛らしい子供たちと美しい奥様が住んでいます。それと、使用人仲間の執事が一人。マリは子供たちのあそび相手をし、執事は奥様のお仕事の手伝いをしていました。
しばらくはそうして平穏に過ごしていたのですが、この所、奥様は夜中に出歩いたり、隠し事をするようになりました。明らかに不審な様子なので何か悪いことをしているのではないか、と気になった使用人ふたりは奥様のことをこっそり調べ始めましたがそれに気づいた奥様は怒ってマリと執事を解雇しました。
お屋敷を追い出されてからもふたりは奥様と子供たちのことが気がかりでした。もし奥様が悪事に手を染めているなら、子供たちは無事ではいられないでしょう。
後にお屋敷に新しい使用人が雇われたことをマリたちは噂で聞きました。その使用人は茶色の髪をした男性で、奥様に気に入られており夜中も奥様に付き添って外出しているようです。マリと執事は、そのふたりが夜中に外出している間にお屋敷に忍び込んで秘密を探ることにしました。
真夜中——奥様と使用人は噂通りに外出中だったので難なく忍び込むことができました。マリと執事がお屋敷を歩いていると浴室から異様な空気を感じたので中に入り、閉じられていたシャワーカーテンを除けて浴槽を見ると、中にはたくさんの人間の内臓が入っていました。
「見るな!」と後ろから叫び声。振り返ると、例の新しい使用人がいました。使用人はよろよろと歩き、内臓がたっぷり入った浴槽の前で膝をつくと頭を抱え「俺にあの人は救えないんだ」と声を上げて泣きだしました。この使用人は奥様のことが好きで、彼女の罪を隠したかったのでしょう。
浴槽からコポコポと音がし、内臓が溢れ出しました。使用人は溢れる内臓に吞み込まれ、食べられてしまいました。マリは執事と急いで浴室を出て玄関に向かうと、そこには白い襦袢を着た奥様が力なく立っていました。何が起こったか知っているようです。マリは奥様に黙礼をし、外へ出ました。
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