時給400円のパン屋さん
「どうにかしてライバル店に勝たなければ」と、毎日、新メニューの開発に励んでいるパン屋さんがありました。そのパン屋さんが最近、とてもおいしいパンを開発したらしいという噂を聞いてマリはそのパンのレシピが気になり、夜中にこっそりとパン屋さんの倉庫に入り込んでレシピを探す事にしました。
忍び込む事には成功しましたが、レシピは見つからないままとうとう朝方になってしまい、残念に思いながらマリは倉庫から出ました。倉庫の扉を開けると、パン屋さんのお店の中に出ます。パンが置いてある棚に、クロワッサンが乗ったトレーがありました。それには【ずっと秘めていたすごい味!!】と書かれた小さな画用紙が飾りつけてありました。クロワッサンをひとつ掴んで食べてみると、それはマリが思っていたよりもおいしいものでした。
そのとき後ろから突然「あなた、朝ごはんは食べた?」と誰かに声を掛けられました。マリはこんな朝方からお店に人がいるとは思っていなかったので驚いて振り返りました。声の主はパン屋の奥さんでした。
マリの手にはまだ食べかけのクロワッサンがあります。どうにか盗み食いを誤摩化そうとしたけれど、それは無理だとさとり「これ、食べてしまいました。ごめんなさい」とマリは正直に謝りました。意外にも奥さんは怒っていないようです。そして唐突に「あなた、ここで働く?」とマリに訊きました。マリはすぐに答えられなかったので試しに何日かだけ働いてみることにしました。
しばらく働くと、マリはこのパン屋さんが気に入ったのでちゃんと雇ってもらうことに決めました。「このご時世だから時給はこんなものだけれど」と奥さんが電卓を使って計算してくれた結果、時給は400円でした。マリは納得ました。
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