真っ白なユキちゃん

 マリは大切な洋服を失くしてしまって、とても落ち込んでいました。そんなマリの顔を覗き込んで「あたしが探してあげる」と声をかけたのは、肌がとても白くて可愛らしいユキちゃんという女の子。


 ユキちゃんはマリの手を引いて、怪しげな倉庫の中に入りました。そこにはちいさな祭壇のような棚と、いかにも儀式で使いそうな分厚い古い本が置いてありました。「本に書いてある呪文を唱えるとお願い事が叶うの。けれど悪魔に呪いをかけられて死んでしまうらしいわ」マリは、こわいからやめよう、と言いましたがユキちゃんは「あたしがやるから大丈夫。マリちゃんは呪われないよ」と言って、マリが止めるのを聞かずにさっさと呪文を読み上げて、マリが失くした洋服について悪魔に訊いてしまいました。


 するとどこからか、数字が書かれた紙切れが落ちてきました。マリが部屋に戻るとその数字が書いてある箱があり、それを開くと探していた洋服が入っていました。


 マリが無事に洋服を見つけた代償として、ユキちゃんは悪魔に「白いものに触れると死んでしまう」という呪いをかけられました。ユキちゃんは、間も無く死んでしまいました。ユキちゃん自身が真っ白な肌をしていたからでしょう。


 自分のせいで優しいユキちゃんが死んでしまったのでマリは悲しくてたまりません。マリはある場所へ向かいました。そこはコンクリート打ちっぱなしの広くて寒々しい倉庫で、浴槽がたくさん並んでいます。全ての浴槽の中には淀んだ水と新しい死体。死体であっても、もう一度ユキちゃんに会いたくて浴槽をひとつひとつ覗き込み、マリは彼女を捜して回りました。

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