第35話
――――――
「《マスター》」
悪魔の声がする。
布団に潜り込んで聞こえない振り。
「《マスター》、狸寝入りしている場合じゃないですよ」
「うるさい、俺は働かないからな!」
リアルに二人で帰ってからこちら、
悪魔は携帯端末に支配する世界を変え、
佐伯博士並の技術力を用いて、悪魔張りの手腕でお金を稼いでいる。
こっちが働いているのがアホみたいになる額だ。
「でも私の記憶ではあと白米一膳分しかご飯がありませんよ?」
がっでむ……そうか、もうそんなか。
「サラさん、物は相談なんですけどね?」
「嫌ですよ。私はちゃんと電気代と端末代支払っているんですからね」
「いいじゃん! サラの預金残高からすれば塵じゃん!」
「その塵くらい自分で拾って来てくださいよ」
むぐう、言い返せない。
「くそう! しっかり稼いで美味そうに飯食ってやるからな!」
ガキか、俺は。
外へと続くドアを開いた時、少し遠くにある携帯端末から声が聞こえる。
「頑張って下さい。勇者さま」
……神さまに祝福されちゃ仕方がない。
頑張るか。
ガーデンワークス 鳳小竜虎 @pixin2
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