第7話

「H因子覚醒を承ります。これより覚醒作業に入ります」

 ネコミミ少女の声に、フラムの舌打ちが重なった。

「サンダ、何でG因子覚醒させなかった?」

「そんなおっかない声出すなよ。お前さんだってわかってんだろ?」

 フラムが俺を睨む。

 美人の視線っておっかねえよ。

 美形に生まれなくてよかった。

 きっとこんな目で見られてばっかだろ?


「ま、そういう訳で俺達はここまでだな。じゃあな」

「は? もう行っちゃうのかよ?」

 何か明らかに俺を探してましたって感じだったのに。


「ああ、何か鬼強い嬢ちゃんからV因子持ってないニュービーがいるって聞いたからスカウトに来たんだけど、ヒーローのニュービー何て、いらねえから」

 いらねえから。

 GWに来る前なら幾度となく聞いた言葉だ。

 だけど、得意のゲームで言われると、腹立つ。

 そりゃGWに来てから俺は今のとこ上手く出来てない。

 だけど、それはトライ&エラーの回数が少ないだけだ。


「じゃあな、生き残っていたらまた会おうや」

 その言葉の裏には明らかにお前が生き残っていたら、

 そんな意味が込められているような気がした。

 フラムはもう振り返る事すらなくギルドを後にした。


「進めても?」

 アイツらの所為で覚醒作業を止めてすまんね。

 俺は内心頭を下げながら、続きを促した。


 すると、ネコミミ少女が俺のこめかみに爪を立てた。

 甘い夜に、背中に突き立てられるそれではない。

 傷口に抉り込むそれだ。


「ぎゃぁぁ!」

 なに、なにしてんのこの子。

 おえぇぇ、血、噴き出しちゃってるし。

 何より、いてぇ……

 GWに来てから何度目になるだろう。俺は失神した。

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