第17話

高卒直後に働いてた頃から大学の前半にかけて(伽藍は一年働いたあと大学に入学した)、とても仲の良かったひとがいた。

本当にべったりで、たとえば働いてた時期は金曜の業後から泊まりに行って、そのまま土日を過ごして月曜日はそのひとの家から出社する、っていうのをしょっちゅうやってたくらい。

大学に入ってからも、向こうが落ち込んだり何かあったりしたら夜遅い時間に帰ってたところを途中下車してまで話を聞いてあげたりした。

かなりアカンやつで、結局夜中とかに死にたいメール送られてめっちゃ心配してたのに当人寝てた、ということがあってからは距離を置いてたんだけど。

結局最後は向こうから縁を切られたな。「わたし、伽藍のことがずっと大嫌いだったの!」って。どういうこっちゃって話なんだけどね。


いま思えば、あれは友情でもなんでもなくただの傷の舐め合いでね。わたしも家庭環境酷かったし、向こうも家庭環境ぐちゃぐちゃだったから。

傷の舐め合いで、それでいて「こいつよりわたしのがマシ」って思ってたと思う。お互いに。人間的な意味でも、人生的な意味でも。

お互いに自分を理解できる相手が得られなくて、自分を理解できる相手なんているわけがないんだってことを理解してなかったからお互いが理解者だって勘違いしてた。

でも、お互い、「自分のほうが上」って思ってたんだよ、きっと。向こうの考えは判らないけど、少なくとも今ではわたしはそう認識してる。

ずっと思い出すこともなかったんだけど、ふと友人の友人のアカンひと話を聞いたときに思い出した。

もう当然連絡なんて取ってないけど、彼女は今どうしてるんだろうってぼんやりと考える。社会生活を送るという意味では、わたしよりも出来てなかった印象なのだけれど。


彼女はいま、何をしているんだろう。

いまのわたしよりも不幸でいてくれ、とぼんやり考える。

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