幕間劇「水晶の騎士と金貨印国の女王」
金貨印国の王后を乗せた馬車は、僻地にある農村からの帰路についていた。
馬に乗った自警団と近衛兵達に護送され、長い年月の末に踏み固められた山道を進んでいる。
馬車の中は赤く染められたフエルトが贅沢に敷かれ、金の糸で金貨の刺繍が隙間なく施されていた。羊毛は、寒冷で農作物の収穫に乏しい金貨印国の主要な特産品である。
がこんがこんと、路面の凹凸に応じて、馬車が揺れる。馬車に乗っているのは御者と、金貨印国の王后、近衛兵長の三人だけだった。
「御身体は、大丈夫ですかな?」
黒々とした髭をたくわえた近衛兵長は、娘ほどの年齢――先月十六歳の誕生日を迎えたばかり――の少女、金貨印国の王后を気遣う様に語りかける。王后はこの時、二人目の子供を身に宿していた。
「ああ」
王后の顔は対面に腰掛ける兵長の方を向くことなく、格子越しの窓の外をじっと見ていた。
――――やれやれ
兵長は内心でため息をつく。二年前に主人である国王と婚姻を結んだこの地方領主の娘の事が、彼はどうにも苦手だった。少女はいつも不機嫌そうに最低限の言葉しか発さず、怒っているような仏頂面を、顔に張り付けたように浮かべているのだった。
――――確かに、ぞっとするほど美しくはあるが
輝くような白い肌と、吸い込まれそうな黒い瞳。その美貌の噂は国中に轟いていた。彼女のもとには物心ついた時分から求婚の手紙が絶えることがなく、金貨印国の現国王もかなり熱烈なアプローチをしていたらしい。
――――だが、やはり冷たすぎる。せめてもう少し年相応に笑えばいいんだろうがな
兵長は、彼女よりも一つ年下の自分の娘のことを思い浮かべていた。年頃の、母親に似て良く笑う娘。娘の表情と重ねると、目の前にいる少女の顔は、美しいのだがどうにも作り物めいて、不自然な印象を覚える。
「兵長」
「――――はっ」
突然の呼びかけに虚を突かれた。揺れ動く馬車の音の中でも、王后の声は良く通った。
「来た時と道が違うようだが」
「エイビー(御意のままに)、王后陛下。村の自警団の者より、朝の道には最近熊が出没するとの進言があり、経路を変更致しました」
王后の言葉に、兵長は窓の外に目を向ける。道の両端を切り立った崖に挟まれている、確かに行きの道とは違う風景だった。
「そうか」王后は興味を失ったように目を閉じる。
直後、馬車の外で、馬のいななきが聞こえた。
†
――――なんだ?
馬車を操縦していた御者は、先をゆく自警団の馬が歩みを止めたのを見て、怪訝な顔をした。
なにやら、先頭の方で言い争いをしているようだった。馬を下りた黒髪の少年が、馬にまたがる自警団のリーダーらしき青年に大声を上げている。少年の声は透き通った高い声色だったが、内容の方は良くわからなかった。
――――おいおい、早くしてくれよ
御者は内心で毒づく。唯でさえ遠回りの道なのだ。彼としては一刻も早く王城へ帰還してしまいたかった。
と、言い争っていた二人の内、馬を下りた長い黒髪の少年の方が、腰に差していた木刀を振り上げると、先ほどまで自分が乗っていた馬の尻に振り下ろした。
馬のいななきが、両端を崖に囲まれた空間に、大きく響く。
と、その残響が終わるよりも先に、長髪の少年が向きを変え、こちらへ向かって走ってきた。馬車の上にいる自分と、目が合う。
大きな目のその少年は、驚いているような、何かを確認しているような、思考が読みとりにくい茫洋とした表情をしている。
と、前方の切り立った崖の上の上から、大きな岩がいくつも落ちてくるのが見えた。轟音が馬車を激しく揺さぶる。
その直後、御者の耳元でぱん、と何かがはじけるような音が聞こえ――――
それが、御者の人生の最期だった。
†
切り立った崖の間に、破裂音が響く。
窓越しにもわかる土煙と、耳が痛くなるような残響音。崖の上から銃弾を間断なく撃ち込まれているのだと、馬車の中に居る近衛兵長は理解した。
目の前の王后も、顔を上げ、辺りを見回していた。
「エイビー、王后陛下」
兵長は、額を流れ落ちる汗を拭いながら、できるだけゆっくりと、声を出した。
「なるべくお身体を低く。そうです。両腕で、頭を、お庇いください」
王后が避難の体制に入ったのを確認してから、兵長は改めて窓の外を伺う。
煙薬も一緒に投げられたのだろう。唯でさえ見通しの悪い道は、完全に視界を塞がれていた。
――――盗賊か、いや、明らかに待ち伏せされていた。計画的だ。自警団の誰かが、手引きをしていたとしか思えない。
王后を庇う体制を取り、馬車の入り口の方へ顔を向ける。
長い長い銃声が続く。
兵長は努めて冷静に、状況を整理しようとしていた。
――――おそらく、狙いは王后だろう。馬車の廻りに着弾の気配がほぼないところから、目的は暗殺ではなく、誘拐である可能性が高い。ならば
兵長は馬車の中に立てかけていた長槍に手をかける。
――――こちらの採れる手段は少ない。馬車に入ってきた者を人質にとり解放を要求するか、従順なふりをして王后と共に隙を見て逃げ出すか、或いは――――
絶望的な状況に、兵長は、自分の身体の下で小さくなっている黒衣の少女に目をやる。銃声は未だ続いている。目撃者になりうる者は、皆殺しにするつもりなのだろう。おそらく、王后以外の全員を。
目の前の背中に、自分の娘の姿が重なって見えた気がした。
背中に、冷たい水が伝う。
頭の中に、家族の顔が否応無く浮かぶ。妻の顔、妻によく似た、娘の笑顔。
――――そう、自分は死ぬわけには行かない。たとえこの小娘を人質に使ってでも、自分は――――
銃声が止み、馬車の外からは叫び声があがる。
金貨印国近衛兵長は、決断を迫られていた。
†
「よし、いいだろう」
崖上から煙に包まれた景色を見下ろしながら、チータという通り名で呼ばれている山猫盗賊団の団長は、義手の右腕を顔の前に持ち上げ、前後に揺らした。チータのその動作にあわせ、銃声が止む。
山猫盗賊団は、最近この金貨印国の外れに移り住んできた荒くれ者の集団で、以前はもっぱら、戦地での火事場泥棒を生業にしていた。
――――回収されず放置された戦死者達から、鎧を剥ぎ髪を毟り武器を奪うことが
――――疎開が進み老人が多く残された村で金目の物と食料を恫喝し奪うことが
つい先日までの、彼らの食い扶持稼ぎだった。
目を細め、砂埃の向こうの光景を把握しようと試みながら、チータはいかにも不器用そうに、左手の土鈴を地面に叩きつけていた。杖印国の特産品であるその土鈴は木々のさざめきに似た音色の鈴で、山猫盗賊団では〝仕事〟の際の合図にこれを用いている。
さりんさりんさりんと、断続的に音をたてながら、チータは慣れない左腕で鈴を降らなければならなくなった、その切っ掛けの出来事を思い出していた。今も雨の日には傷口がじりじりとうずく、右腕を失った日のことを。
†
ちょうど二週間前の事だった。
彼ら山猫盗賊団が此処に移り住む以前、ねぐらにしていた土地――金貨印国との国境に近い、杖印国の山の奥だった――に、一人の男が、訪ねてきたのだった。
金貨印国と杖印国の争いが激しさを増していたその夏は、彼らにとっては大きな稼ぎ時でもあった。チータ率いる山猫盗賊団も、夜は見回りの兵士達を警戒しながら、鉄と腐った肉のにおいが濃く残る戦場を歩き、金と交換できそうな装備やちらばる矢をかき集めるのに忙しかった。当然、アジトに最低限の人員だけを残して外出する機会も多くなる。
明け方に部下と共に帰還したチータは両腕一杯の収穫物を降ろすと、留守番から夜の間に訪ねてきた者が居ることを聞かされ、客間へと向かった。
土壁の客間には、青い甲冑を纏った背の高い男が一人佇んでいた。備え付けの椅子にも座らず、立ったままチータが帰るのを待っていたようだった。
一瞬の警戒。チータは距離を取りつつ、男をさりげなく観察する。柔らかい印象の顔の男。知らない顔だったが、甲冑の胸にある刻印は剣印国のものだ。
剣印国は大陸最大の軍事輸出国として名高く、つい先日も武力制圧を完了した遊牧民族達を用い、傭兵団を結成していた。常に大量の武器を欲している国で、チータたち山猫盗賊団の上客でもあるのだった。
「待たせたようだな」
まるで一本の大木のように、昔から其処にあったものであるかのように、どっしりと安定した立ち姿のままで、男はほほえんだ。
「大収穫だったようですね」
ともすれば嫌みのように受け取れる台詞だったが、男の口ぶりからは非難の感情は読みとれなかった。単純に遅くなった理由について確認している、と言った感じである。
「……用件を聞こうか」
チータは入り口近くに置かれている水差しに直接口を付けてのどを潤すと、あえて乱暴な口調で様子を探った。
「金勘定の話だったら部下としてくれや。そっちは任せてあるんでな」
男は柔らかくほほえむと、腰に下げていた皮袋から羊皮紙を取り出した。
「いいえ、今後の取引に関しては、問題ありません」
チータは鼻を鳴らし、改めて男の全身を見る。
明るい色の短髪、宝石のようなブルーの瞳。日焼けを知らない滑らかな肌から、男の本来の役職が兵士ではなく文官の類であると知れた。羊皮紙を広げる動作は淀みないが、右腕は常に、剣が抜ける位置に置かれている。
「今日は個人的なお願いに来たのです」
テーブルを挟んで男と向き合うと、チータは羊皮紙をのぞき込んだ。
羊皮紙に描かれているのは地図であるようだった。チータは字が読めなかったが、地名の横に描かれた紋章から、それが金貨印国の物であることが推測できる。
「次の満月の日、金貨印国の王后が、この村を慰問に訪れます」
男は左手の人差し指で、地図の一点を指した。
「杖印国との戦争が激化している影響でしょうね、各地を回っているようです」
「使える物は何でも使うわけだな。ご苦労なこった」
チータは髭の伸びた顎をさする。金貨印国の王后が子を宿しているという噂は耳に挟んでいた。身重の后をも駆り出す、なりふり構わない戦意向上策から金貨印国の消耗の程が伺えた。
「そこで、です――――」
言葉を一度切ると、甲冑の男は地図に載せた指を持ち上げてゆっくりと、自身の唇に当てる。
「貴方がたには、そこで金貨印国の王后をさらっていただきたい」
†
部屋の気温が、急激に下がった様な気がした。
喉が、己の唾液を飲み下す音ですら、耳障りに感じる。
目の前の男はこちらの反応を待つように、ほほえんでいるだけだ。
「そうか」
チータは動揺を面に出さないように気をつけながら、身につけていた外套を部屋の隅へと粗雑に放る。
それが合図であった。
土壁の部屋、天井近くに備え付けられている窓の木戸が開き人影が現れた。六人の男が、上方から弓で、甲冑の男に狙いを定める。
「すまねえな、旦那。あんまり怖い話なモンで、こちらもブルっちまってよ」
甲冑の男は一瞬目を大きく開くと、口元に手を当ててほほえんだ。
「いえ、かまいませんよ。このくらい用心深い方でなければ」
男に焦った様子が見られないのが、チータには不気味だった。この段階にあって、チータはあることに思い至り、冷たい物が背筋を走るのを感じていた。
「……方法と報酬は?」
男の笑みが、深まる。
「話が早くて助かります。子細は後ほどお話ししますが、王后が帰城する折、私たちの手の物がここへ」――――男は地図上の一点を指す。山の中の、崖に挟まれた小道だった。「誘導します。貴方達は罠を用意し、それを待ちかまえていただく」
「……質問が三つある」
「はい」
「一つ。女王の生死は?」
「問いません」男は、自分の短い髪を撫でつける仕草をする。「もちろん、生きているのに越したことはありませんが」
「二つ。手の者が村にいるんなら、何故そんな大がかりの必要がある?そいつと協力して隙を見てさらっちまえば終いだろうが」
鳶色の髪、紺碧の眼。甲冑の男の色素の薄い瞳が、しかしチータの言葉に応じて、鈍く曇ってゆく。問いながらも、チータには見当がついていた。おそらく、男の狙いは王后ではなく――――
「――――質問は三つでしたね」
胸の辺りから発せられているような男の声。
「ああ、そうだな」チータは男の雰囲気に呑まれまいと、口元に笑みを浮かべる。それとなく上方で弓を構える部下たちを伺った。
「三つ。俺たちがこの依頼を断ったら、どうするつもりだ?」
†
「三つ目の問いから、先にお答えしましょう。もっとも」男は肩をすくめると、胸の前で手を広げた。何も持たない両掌を、チータへと向ける。「二つ目への私の回答を、貴方はもう察しているようですが」
チータは男の目をじっと見つめ、続く言葉を待ち受ける。
「――――翠斑病をご存じですね」
「ああ」
翠斑病は杖印国で流行している病であった。まず身体中に緑色の斑点が表れ、その後に毒素が肺を蝕む。罹患した者の多くが一年ほどで吐血と共に絶命する奇病である。
「我々はその特効薬を所持しています。貴方達が無事、金貨印国の王后を私の前にお連れする事ができたなら、その製法をお教えしましょう」
「何だと……」
「今や杖印国の王侯貴族は、戦争の驚異と流行り病の恐怖で頭が一杯です。事実、領主達の中にも戦地で患った翠斑病により命を落とした者は多い。うまく立ち回れば、貴方達全員が二代遊んで暮らせるだけの階級と金は手にできるでしょうね」
部屋中の空気が緩く流れ、肌を撫でるような奇妙な雰囲気に変わる。窓辺で弓を構える者達からも、ざわめきが聞こえた。
「なにより――――」
その空気が弛緩した一瞬。
「馬鹿野郎!目を離すな――――」
チータの怒号よりも早く。
駆けだした男。彼の抜いた剣の切っ先が、ぬらぬらと光る緑色の液体をまき散らしながら、チータの右腕を切りつけた。太い血管が傷ついたのか、間欠泉のように吹き出す赤い液体。
体勢を崩すチータの胸ぐらを掴み、左腕の間接を固めながら、男はチータの首筋に剣先を当てがい、よく通る低い声で、部屋に居る全ての者に語りかけた。その身体が震えるような低い声が、男の本性なのだと、そこにいる誰もが感覚的に受容した。
「親愛なる山猫盗賊団の団長殿が、死なずに済みます。悪くないでしょう?」
†
チータは大量の出血により靄がかかったような視界で、その後の出来事を認識した。
青い甲冑の男はチータの身体を盾に、客間の入り口へと向かう。
「後ほど部下が参ります。作戦の仔細はその折に。ごきげんよう」
そういい残すと、男はチータの身体を床に乱雑に倒し客間を出ていった。
窓から床へと飛び降りたチータの部下。そのうちの数人が、罵声を飛ばしながら男の後を追おうとする。
「やめろ、追うんじゃねえ」
紫のバンダナを巻いた部下に止血されながら、チータは静止の声を上げた。
「なんでだ団長。俺ら全員でかかればあんな奴」
訛りの強い部下の声を聴きながら、チータは己が部下達の顔を一人一人思い返していた。
山猫盗賊団は、十八人の男達で結成されている。元々は杖印国の孤児だったチータを中心に、戦火の中で何とか生きていく手段を模索し、組織された団体だった。
「団長……」
チータの腕を、綿布できつく絞め上げるバンダナの男は、日に焼けた顔を赤く染め、険しい顔でチータを見ている。
チータは一度息を吐ききった。肺がけいれんしている様な荒い呼吸を整えようとする。
「駄目だ」そう、武装した人間による十八対一の争いならば、その一人が神の御子でも無い限り彼に為すすべはないだろう。しかし――――「奴に手を出せば、五千の軍隊と、やり合うことになっちまう」
緑色の液体に濡れた男の剣。その刀身に刻まれた文様を見て、チータの疑惑は確信へと変わっっていた。
チータは、止血が済んだ自分の右腕を憎々しげに睨む。緑色の液体は即座に死に至る毒物ではないようだったが、布の巻かれた肘から先は、すでに黒々と壊死していた。虫を殺すようにふるわれた容赦のない剣戟が、言外に男の真意が依頼ではなく逃げ道のない命令なのだと告げていた。
「奴は剣印国の王族だ。間違いねえ。糞垂れが――――」
†
男が去った翌日の朝、鎧に身を包んだ大勢の兵士達がアジトに現れ、作戦に必要な道具と武器が運びこまれた。
木箱に詰め込まれた大量のマスケート(杖印国の特産品である火薬を用いた火縄銃)が、昨日語られなかった男の目的を暗示していた。
――――やっぱりだ
あの青い甲冑の男にとっては、王后の生死など本当に二の次なのだ。
杖印国の人間が金貨印国の王后と農民に手をかけたという事実。それによる二国間の争いの激化こそが、漁夫の利を狙う剣印国の狙いなのだろう。
鎧の兵士から作戦の詳しい日程と内容を聴かされながらも、チータの頭の中は、たった一つのことに占められていた。
すなわち、自分たち盗賊団が皆生き残るために、この作戦の中でどう立ち回るか、という思考に――――
†
「――――糞垂れが」
土鈴を間断無く打ち付けながら、チータは右手――針金で造られた粗雑な義手が付けられている――で首もとを掻いた。白く粉を吹いた皮膚が破れ、血がにじむ。
腕を切りつけられてからこちら、身体に痒みを覚えることが増えた。剣に付着していた液体のせいだろうか。騒ぎの後に観察したあの液体はヨモギに似た匂いを放っていた。止血後、念入りに洗い流したが、あの青臭い液体は幾分か身体に取り込まれだろう。
腕の痛みと断続的に全身を襲う痒みが思考を妨げる。
武器の輸送や、道を塞ぐ罠の設置、拠点となる宿の確保に追われて、結局男の思惑に対する有効な手を打てなかった。その焦りと苛立ちが、チータの首筋に赤い傷痕となって表れているようでもあった。金貨印国に対して後ろめたい部分の大きい山猫盗賊団が、取りうる手段は少なかった。
――――今は、目の前の任務を成功させるしかない。奴にとって生死が二の次とはいえ、王后は剣印国に取り入る重要なカードになるだろう。
†
眼下の土煙が晴れてゆく。
狭い街道は所々黒に染まっていた。その上に倒れている人と馬。
馬車を避ける形で何十発と打ち込まれたマスケートの弾丸は、つつがなく道案内の村人と近衛兵達の口を塞いだようだった。
チータは首を伸ばし街道の様子をうかがう。
馬車の廻りに動く者はいない。流れ弾に当たったのだろう、御者までも黒い水たまりの上で意識を失っていた。よほど従順に躾られているのであろう、毛並みの良い馬車馬は、度重なる爆音の後も興奮することなくきちんとその場にとどまっている。
一団を此処まで誘導してきた『手の者』は、落石を合図に馬車の下へ隠れている筈だ。
馬車の規模からして、中にいるのは王后を除いて一人か二人、多くても三人程度だと思われる。
そこまで観察してから、チータは土鈴を叩くペースを変化させた。
リズムの変化に呼応して、七人の部下が馬車の廻りを取り囲む。
その内二人が馬車に近寄った。マスケートを構えたままで、馬車の扉を何度も蹴飛ばし始める。馬車につながれた馬の小さな嘶きが、高台から様子を見ているチータの元まで届く。
部下の怒号。
木の割れる音。
蝶番の部分が砕かれ、扉が傾く。
その刹那、何かが弾けるような音と共に、馬車の扉が内側から開け放たれた。扉前の二人が弾き飛ばされる。周囲の五人が馬車の出入り口に向けてマスケートを構えた。
内側から表れたのは、大柄な黒い鎧の兵士だった。全身鎧に身を包み、顔は見えない。
長槍を構えた兵士は、扉に弾き飛ばされ体勢を崩した部下の所へと走る。
――――させるかよ
チータは土鈴を叩きつけるように鳴らした。攻撃の合図だった。
重量のある全身鎧を纏った兵士。その敏捷性に欠ける標的に、一斉に弾丸が撃ち込まれる。
†
周囲を崖で挟まれた街道に、マスケートの爆発音が残響する。
全身鎧の兵士は着弾の衝撃に長槍を手放す。受け身も取らず崩れ落ちるように倒れ、動かなくなった。
部下達は土鈴の合図で馬車の内部へ進入する。
数刻の後、手を背後に拘束されている黒いドレスの少女と共に、部下が馬車から降りてきた。
腕から延びるロープに引かれながら歩く少女は、肌そのものが白く光っているように感じられた。美的感覚という言葉も知らないチータをしてそう思わせる、噂通りの美貌だった。
――――ようやく、ひとやま超えたな。
チータは密かに安堵した。
――――だがこれからが本番だ。こちらを虫けらとしか思っていない奴ら相手に、立ち回って行かなきゃならねえ。
チータが身を潜めていた茂みから立ち上がると、崖下にいる部下達と目が合った。
お調子者が胸の前で振る手に、小突く真似でこたえると、チータはひとまずの成果に口の端を上げ、歯を見せた。
†
チータは、王后を輸送用の木箱に仕舞うよう指示すると、土鈴で部下達を呼び寄せた。馬が使える程度に落石を除けなければならなかったし、欠員がないことも確認しておきたかった。
――――おっと、そういえば一人忘れていたな。
チータは馬車の方へと向き直る。大きな車輪の間に、此処まで王后の一団を誘導してきた『手の者』が隠れているはずだった。甲冑の男との関係はわからないが、使えそうであれば懐柔しておきたい相手である。
チータは上着の懐から革袋を取り出す。妙にかび臭いその袋は、作戦が終了した際にその『手の者』へ渡すようにと持たされたものだった。
まばらに集まってくる部下達。十八人全員の無事を確認すると、チータはバンダナの男に皮袋を放り、床の下の人間を迎えるように命じた。
「団長」方向を変え、落石を動かしている部下の方へ向かいかけたチータの耳を、バンダナの声が打った。「死んでいます」
†
「……なんだと?」
チータが視線を向けると、バンダナは馬車の下からずるずると人型の塊を引き出していた。
肌の色から、絶命してから間もないことがわかった。こめかみから血を流している。この傷が死因のように思われる。
最初は跳弾にでも当たったのかと思われたが、それにしては服装が妙だった。車輪の間から引っ張り出された男の死体は、簡素な肌着と下着しか身につけていなかったのだ。これでは、まるで――――
チータの思考はそこで止まる。バンダナの頭の向こう、馬車の操縦席の辺りで影が動くのが見えた。チータはバンダナの名を叫ぶ。
「後ろだ!御者が生きていやがった!」
チータの声を受けたバンダナが、振り返るよりも早く――――
操縦席から飛び降りた人影が剣を抜く。その剣の切っ先が、バンダナの肩から腰にかけ斜め一直線に叩きつけられた。
†
崩れ落ちる部下の名を、チータは叫んでいた。
土鈴を振り、残る仲間を呼び寄せる。
走る人影。馬車の前に倒れ伏す黒い鎧へと近づく。
女王の拘束に当たっていた二人の部下が、マスケートを構えた。
人影は立ち上がると、黒い鎧の側に落ちていた長槍を拾い、其方へ思い切り投げつける。
槍の穂先が一人の喉笛を貫くのと同時に、隣にいた男のマスケートから爆音が響いた。
弾丸は人影の大分手前に着弾する。射撃者が銃を捨て、腰に下げた短剣を抜くよりも早く――――爆音の直後に駆けだした人影の剣が、その首の中程を掻き切った。
†
チータは人影を睨みつける。
闖入者は少年ともいえる年若い男。長い髪を後ろでくくり、都会的なデザインのシャツはサイズが合っておらずぶかぶかだった。
部下達の近づいてくる足音が聞こえる。
チータは土鈴を降る。爆音。一斉に放たれるマスケートの弾。
人影は、拘束された女王が押し込められている木箱の方へ剣を捨て、死体の喉元に突き刺さる長槍を抜く。そのまままっすぐチータの方へと駆け寄ってきた。
己に向けて放たれた弾丸を全く意に介さず、近寄ってくる人影。チータの反応が遅れる。
回避の動作を取る素振りすらない人影。しかし銃弾は当たらない。
利き腕とは反対の腕で、チータが腰から短剣を抜く。
喉笛が、振動し、何かがつぶれるときのような音が発せられる。
半歩後ずさる身体。砂を踏む音。
マスケートを捨て、剣を抜いた部下が、こちらへ寄ってくる。
「何者だ。お前は」
チータの問いに、刹那、人影の動きが止まる。
人影の大きな目と、視線が交わる。深い井戸のように、底の見えない真っ黒な瞳。
驚いたように見開かれた瞼が、閉じられる。
そして
「水晶の騎士だ。そう名乗れと言われた」
低い声。返答と共に、人影の持つ長槍の柄は閃き、チータの眉間の骨を正確に砕いた。
†
朦朧とする意識は、世界との接続を絶たれようとしていた。
自分が地面に伏していることを、チータは理解する。
音が消え失せ、小さな穴から覗くような視界の中で、その後の出来事が像として、チータの頭に流れ込んできた。
隊列を組み繰り出す部下達の攻撃は、しかし人影には当たらない。
一人、また一人と、長槍に武器をはじかれ、喉笛から血を吹き出し、倒れてゆく。
部下が一人倒れる度に、チータは動かない唇で、その名を呼んだ。
弾込めを終えた部下達が、回り込んで発砲するマスケート。その銃弾は矢張り、人影の肉体にかすりもしない。
まるで、予めどこに攻撃がくるのか知っているかのような動きだった。
長槍を振るう動作、その最中ついでのように投げられた石が、マスケートを構える部下の眼 窩を抉る。
視界が暗さを増してゆく。意識を手放す寸前、チータの脳裏に浮かんだのは二週間前のことだった。
『武装した人間による十八対一の争いならば、その一人が神の御子でも無い限り彼に為すすべはないだろう』
――糞垂れが、だったら、奴は――
それが、杖印国の荒くれ者達の徒党、山猫盗賊団団長であるチータの最期の思考だった。
†
――――いったい、何が起こっているのだ
武装した盗賊の最期の一人が倒れていくのを地に伏せたまま眺めながら、金貨印国王后の近衛兵長は目の前の光景が理解できずにいた。
鎖帷子と全身鎧越しに受けた銃弾は肋骨を何カ所か砕いたようだが、思惑通り命を失うほどではなかった。
敵の人数や武装の面から、取りうる手段が無いと判断し、様子をうかがおうと息を潜めていた処、例の闖入者が現れたのだった。
――――しかも、妙なことを言っていたな。水晶の騎士だと
それは兵長が子供の頃、祖母から聞いた物語に出てきた人物の呼称だった。
金貨印国に古くから伝わる伝説の中で、水晶の騎士は泣いている人に手をさしのべる神の遣いの役割をしていた。
水晶の騎士を名乗る男が、王后の捕えられている木箱を開け、口を塞ぐ布を取り去るのを兜の奥から眺めつつ、近衛兵長はとるべき行動を決めかねていた。
身体中の痛みをこらえながら、鉄と汗の匂いの充満するこの暗闇で、見定めなければいけない――近衛兵長は喉を鳴らした――あの神の遣いを騙る男が、何者であるのか。
「ああ、未だ生きていたのか。済まないね」
と、近衛兵長の視界が突然暗くなる。何かの影に入ったような明暗の変化に網膜が対応するよりも早く、兜の間から細長い鉄の固まりが差し込まれ――――
†
拘束を解かれた金貨印国の王后は、木箱の内で目の前の男の手を取って立ち上がる。
見覚えのない少年。王城の使用人がよく身につけるシャツを着ていたが、細身の身体には大きすぎた。長い黒髪を革紐で一つにまとめている。
少年は王后の身体を恭しく抱え上げ木箱の外へ運ぶと、三歩下がって跪き、地を見つめたまま言葉を発した。
「エイビー(御意のままに)、女王陛下。迎えに参りました」
年若い見た目に反して低い、しっかりとした声。
王后はしばらく平時の、人形のように作り物めいた表情で少年を見つめていたが、やがて堪えきれなくなって吹き出した。
「くくく、かかかか、あはははは――――」
崖に挟まれた街道に、王后の声はよく響く。
見上げると吹き抜けのような空は、掻き曇り雨の訪れを予感させた。
幾多もの屍が転がる坂道は、血液と火薬の匂いに満ちている。
数刻、立ったまま痙攣するように笑い続けた王后は、肩で息をしながら、ひざまずく少年に語りかけた。
「くくかかくく、くかかかか、全く、愉快だ。こんなに愉快なのは初めてだ。くくかか。私は〝まだ〟女王ではないよ。だが赦(ゆる)す。面をあげろ。かかか。名乗れ。其方の名前はなんと言う?」
王后は破顔し、殆どまくし立てるように語りかける。それはまるで、堤の堰を切られ、一気にあふれ出す水のようだった。
少年は顔を上げる。大きな目が、まっすぐ王后を見上げた。
「私は――――「水晶の騎士だ、そうだろう?」
王后に答えかけた少年の声は、彼方から響く別の声に遮られた。
†
女王と跪いていた少年が、弾かれたように声の聞こえた方へ向きなおる。
視線の先には、地に伏している黒い鎧の亡骸を踏んで、小柄な人物が立っていた。ぼろぼろのローブを、頭からすっぽりと被っている。
「知り合いか?」
王后は人形のような表情に戻り、身体を起こした長髪の少年に問いを投げる。
襤褸布に覆われ顔の見えない人影が、右手を胸の前に掲げ一礼する。外側から目線が追えないのが不気味だった。
「一昨日、一度だけ」少年は箱の脇に落ちていた剣を構え、王后へ返答する。「名前はシェルティ」
それは、王后の耳には覚えのある名前だった。社交の会場でよく噂になっていた吟遊詩人が、そんな名前だったと記憶していた。
曰く、まるで早馬の様に世界を回り、その時々の状勢を歌にする詩人。
田舎の酒場でばかりその歌を披露していることから、噂をしていた貴族たちの内に、実際それを聴いた者はいなかった。しかし英雄譚として仕立てられるバラッドの中には、その地方を治める領主ですら知り得ない戦況や政局がしばしば織り込まれるという。
酒の席の与太話では、間謀として雇う人物の候補としてその名を挙げられる事が多かった。或いは、他国の間謀である疑いが強い人物としても。
「そうか。対面の機会があるとは思わなかったが――――」
しかし今、王后にとってその噂話は些末なことでしかないのだった。
「――――そこを退け、詩人。私の護衛は、お前の舞台ではない」
†
王后の言葉に、布越しに僅かにのぞく口元が、笑みを形づくる。
一つ頷いて、襤褸を纏う詩人はゆったりと音も立てず、黒い鎧の上から灰褐色の地面へと降りた。
「これは失礼。ご安心を。今は事を構えるつもりはないのです」
シェルティの声は、女性の声と言われれば低いと感じ、男性の声と言われれば高いと感じる類の、性別が判断しづらいものだった。
王后と少年の前方を横切るように、歩く。靴の類は身につけておらず、裸の足が、地面を踏んでいる。
いつの間にか、シェルティの胸には手琴が抱かれていた。
ぽろりぽろりと、金貨印国特有の音階で、メロディが奏でられる。
少年は剣を構え、王后と詩人の間に立つ。いつでも詩人にむけて駆け出せる姿勢をとった。
「それでは、お前は何をしにきたのだ?」
王后が問いかける。山彦のように、シェルティの手琴の音は崖に挟まれた空間に幾重にも反響している。
「それは」重なり合う音に併せ、歌うように、詩人の口が開かれる「祝福」
王后と少年の周りに、円を描くような軌跡。裸足の詩人は歩き、歌う。
「そう、それは祝福」
「親愛なる水晶の騎士と」
「其の主人となる」
「金貨印国の女王の出会いに」
反響するシェルティの歌声は、まるで複数の人間が代わる代わる語りかけてくるように感じられた。
「僅かの幸福に」
「ささやかな祝福を」
「ああ、でも急いだ方がいい」
「剣を抱く鼠どもは腹を減らし」
「チーズのかわりに欠けた金貨を」
「持ち帰ろうとしているから」
シェルティは歌を止め、王后と少年の方へと向き直る。
「水晶の騎士と金貨印国の女王よ」
呆然としていた王后は、その言葉に我に返った。
「早く城へとお戻りなさい。そこで死んでいる賊共は杖印国の者のようだが、裏で糸を引いているのは剣印国の人間だ。この襲撃の顛末はすぐに、賊を監視していた者の口から剣印国の王へと伝わるだろう。追っ手が来る前に逃げた方がいい」
王后はいきなり現実的な調子に変わった詩人の言葉に軽い目眩を覚えた。しかし剣印国の動向には思い当たる節があった。鵜呑みにはできないが、その説明は道理に合うと感じた。
「幸い、落石は馬一頭通れる程度には片づいたようだ。ああ、道はわかるね。このまま真っ直ぐ行けば大きな通りに当たる。そこから城までは、東に道なりだ」言葉と共にシェルティは、馬車と馬をつないでいた金具を妙に手際よく取り外す。「馬具は、其のあたりで倒れている近衛兵の馬から借りるといい。彼らもきっと本望だろう」
†
「……わけが、わからん」
黒い馬の上。少年の背中につかまりながら、金貨印国の王后は溜息と共にそうこぼした。それは詩人に見送られ、襲撃を受けた小道を起ってから、初めて口にした言葉だった。
見晴らしのよい大通りに出る時分には、日が沈みかけていた。開かれた山道にはちらほらと人の姿が見える。家路を急ぐ農民達の姿が目立つ。
王后は一日のことを思い返す。
朝早く起き、従者に手伝われながら礼装をし、出立した。配偶者である国王が在城であれば挨拶をする決まりだが、彼は戦地近くの砦に在留しているためその行程は省かれた。
近衛兵長に手を引かれ馬車へと乗り込み、既に何度か訪れたことのある農村の教会で用意された訓示を読み見上げた。其の帰り道に――――
「なあ、水晶の騎士」
「エイビー、女王陛下」
「近衛兵団の皆は、よい家臣達だったと思う。兵長は私のことをよく思っていないようだったが、まじめな男だった」
「エイビー、女王陛下」
ぶうと口をとがらせて、王后は額を少年の背中に打ち付ける。其の様は、年相応の少女の面差しだった。
「今は許す。しかしほかの者の前では王后陛下と呼べよ」
「エイビー、女王陛下」
少年の返答に、王后は思わず小さく吹き出した。
少年の返答は平坦だったが、王后はそのまま滔々と語り続ける。
「私は彼らの名前すら、知らなかった」
それはまるで、酒に酔った者が、普段胸に抱えている心情を吐きだしている様であった。
「兵長は王の命により私の護衛となり、名を呼ぶ機会も無いままに、今日まで来てしまった。
彼の部下たちとは、口を利いたことさえも、無かった」
「……」
「水晶の騎士よ、名乗れ。其方の名前は何という?」
少年は少しの沈黙の後で、呟くように、自分の名前を口にした。
王后は、少年の背中に頭を数度打ち付けると、身体を振るわせた。
「かかか、そうか、愉快だ。そうか、覚えておこう。私は、其方の名前を――――」
†
山猫盗賊団による王后襲撃事件の後、金貨印国の状勢は大きく変動する。
帰城した王后は、自身の身柄救出と盗賊討伐を名目に、水晶の騎士を名乗る少年を兵士に取り立て、彼を団長に据えた直属軍、陽炎騎士団の発足を独断で議会にかけた。
国王の不在時であったし、新しい近衛兵団が必要だったとはいえ、戦功につながりにくい護衛任務ばかりの役割は背負いたがる者が少なかった。そのような事情もあり、王后の我儘は思いの外すんなりと可決される。
その半年後、王后が第二王子を出産する数日前、金貨印国国王が杖印国との争いで戦死した。
産婆の配慮で出産を終えてから国王の死の報を受けた王后は、大変に気落ちしたようだった。
乳母と数人の世話係だけを側に置き、自身の私室から出る事を拒むようになった。王が死に、第一王子もまだ1歳の幼児だったため、彼女は女王を拝命したが、拝命の儀すらも特例として教会から使者が呼ばれ、その部屋の中で行われた。
自ら前線に立って士気を保っていた先王の崩御もあり、金貨印国の軍は離反者と死者の数が膨れ上がる一方であった。
戦況が変わったのは女王の命で、軍全体の指揮を陽炎騎士団がとるようになってからだった。
当然、最初は軍の内部から不満の声が多くあがった。しかし抵抗線の薄い兵站を正確に奇襲し、敵兵の分断と兵糧の奪取を同時に行う戦術は、次第に杖印国の兵力を削り自国の勢いを高めていった。
それは敵国の動きを予め全て知っているかのような戦い方だった。金貨印国中で、陽炎騎士団の団長を物語の英雄である水晶の騎士になぞらえたバラッドが大流行となった。
弱ったのは杖印国の国軍だった。優勢だった戦局がじわじわと押し返され、今や動けば動いた分だけ力を削られるような有様に陥っていた。
背後から他国の消耗を、虎視眈々と狙う剣印国の動きがあからさまになってきたこともあり、杖印国は金貨印国へ休戦の使者を送ることとなった。
†
少年と少女の出会いから、ほんの一年あまりの出来事だった。
長きにわたっていた金貨印国と杖印国の争いはひとまずの休戦を迎えた。
そして少年の去った後、彼が生まれ育った農村では疫病が流行し、停戦を迎える頃には村の住人の半数以上が病で命を落とす事態となる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます