第31話 口裂け女と告白

「好きです、付き合ってください!」

 放課後の教室。私は、ずっと好きだった人に告白した。

 同じクラスの彼は、都市伝説とかホラーの本ばっかり読んでる変わり者で、でも笑顔がかっこいい。

「ありがとう」

 彼は照れくさそうに言った。

「あのさ、ひとつ話したいことがあるんだけど、いい?」

 私は頷く。

「小学校の時なんだけどさ。友達の家で遊んで、ちょっと帰りが遅くなったことがあったんだよ。帰り道の途中、ひと気のない道があって、そこの電信柱の陰から、知らない女の人が出て来たんだ。背はその時のオレよりずっと高くて、髪が長くて、顔には大きいマスクをしてた。もう、一目で普通じゃないって分かる感じ。それで、オレに向かって言ったんだよ。

 『私、キレイ?』って。

 どう答えていいか分からなくてとりあえず頷いたら、その人がマスクを外した。マスクの下の口は大きく耳元まで裂けてたんだ。噂に聞くまんまの口裂け女。

 オレはね、その顔を見て思ったんだ。なんてキレイな人なんだろうって。

 おかしいと思う? その時まで知らなかったし、知りようがなかったんだけど、オレの理想のタイプって、口の裂けた女の人だったんだよ」

 彼は自分の机の中から筆箱を取り出した。

「キレイですって言ったら、口裂け女の方も驚いたみたいで、走ってどこか行っちゃったんだけどね。

 その日以来オレはずっと、もう一度口裂け女に会いたいと思い続けてたんだ。

 お前の気持ち、嬉しいよ。だからさ、オレのこと好きなら、お願い」

 筆箱の中から、ハサミ。彼は笑顔。

「口裂け女になって」

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