第26話 耳の手紙

「耳の手紙って知ってる?」

「何それ」

「じゃあ、不幸の手紙は?」

「知ってる」

「棒の手紙」

「あれでしょ。『不幸』って字を読み間違えて、『棒』に変えちゃったってやつ」

「そうそう」

「それで、耳の手紙って、何」



 あるところに女の子がいました。

 女の子にはお姉さんがいました。お姉さんは女の子よりずっと大人で、お姉さんの友達もみんな大人でした。

 自分も早く大人になりたいと、女の子はいつも思っていました。


 ある日、お姉さんあての手紙が届きました。やけにふくらんだ封筒を見て、女の子は思いました。

 大人たちはどんな手紙を書いているんだろう。

 どうしても知りたくて、女の子は、こっそり封筒を開けてしまいました。


 中には一枚の便せんと、変なものが入っていました。

 手紙にはこう書かれていました。


 これは 耳の 手紙です

 これをうけとった 人は

 つぎの ひとに 耳

 をおくってください

 とめたら死にます

 これは 耳の手紙 です


 手紙といっしょに入っていたものは、耳でした。本物の耳でした。

 女の子は怖くなって、耳も手紙も近くの森へこっそり捨ててしまいました。


 その一ヶ月後、お姉さんは事故にあって亡くなりました。

 悲しむ女の子のもとへ、ある日、手紙が届きます。

 その封筒は、やけにふくらんでいました。



「とまあ、これが耳の手紙」

「へえ、怖いねぇ。ところでさ」

「何?」

「あんたの耳が片方無いのって」

「うん」

 女の子はにっこりと笑いました。

「私はちゃんと送ったから、大丈夫」

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