第24話 夜はお墓で肝試し

 肝試しの会場といえば、やはり墓場は外せないだろう。

 学生たちが、墓場の入り口でわーきゃーと盛り上がっている声が聞こえてくる。……わざわざ墓場を使っているというのは、この場所に対して少なからず「幽霊が出そう」というイメージがあるからだろうが。だとすれば、霊が漂っているかもしれない場所を余興に使うというのもどうなんだ、と思わなくもない。

 大きな墓地の最奥で石段に腰掛け、鳥井は暇を持て余していた。

 彼の役目は、二人一組でやって来るクラスメイト達にお札を渡すことだ。もちろん本物のお札ではない。紙を適当に切って、「お札」の二文字を書いただけの代物。要は、一番置くまで到達したという証明になりさえすればいいのだ。

 やがて、最初の組が到着する。普段はさして仲の良くない男子女子が、和気あいあいとお札を受け取っては帰りのルートへと進んで行く。

 しばらくの間隔を置いて次の組。また次の組。人が来るたびお札を渡していけば、用意していたお札が順調に少なくなっていく。何の刺激もない繰り返しに欠伸を零す。

 鳥井にとっては退屈なだけの時間が過ぎ、幾人ものクラスメイトたちを見送ったところで。やって来た一組が「お疲れ」と声をかけてきた。彼らにもお札を渡す。

「悪かったな、お前だけこんな仕事させて」

「別にいいよ」

「俺達で最後だから」

「あ、そうなんだ。お札一枚余っちゃったな」

「あれ? 誰か来なかったやついるのか」

「ううん、最初から十枚ぐらい多めに作っておいたから」


「……うん?」

「うん?」

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