第13話 ころころころり

 ころり、ころころ。

 あれ? おかしいな。 景色が回る。


 覚悟を決めた時だった。

 このままではいけない、と。

 やるしかないんだ、と。

 鋏を振りかざしたその時だった。


 彼の怯えた眼差しが私を見ている。私を見下ろしている。そしてぐるりと、景色は回る。

 天井。

 私の足。その後ろに誰かの足。

 あれ? おかしいな。

 頭を失くした私の体が、ゆっくり傾ぐ。


 ころり、ころころ。

 回る視界。

 鋏が落ちた音。


 ああ、なるほど、と遅れて理解。


 回る景色の中で、自分の体が倒れるのを私は見ていた。彼が悲鳴を上げる。

 私の首を刎ねた彼女は、未だ声ひとつ上げない。

 悔しいな。見上げることしかできないなんて。


 私の覚悟、少し遅かったのね。

 目を瞑ることさえできず、私はころり、転がるだけ。

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