第6話 どこにでもある七不思議
『えー、どうも、こんばんは。新聞部の鳥井です。今日は先生方から許可を得て、夜の学校を探索したいと思います。
テーマはずばり、【七不思議の真実を暴く】。
やけに幽霊の目撃の多い我らが鴉ヶ岡中学。果たして霊の映像は撮れるのでしょうか』
『いぇーい! 俺今移ってる?!』
『もっとカメラこっち向けろよ、ほらほら!』
『男子はしゃぎすぎー』
『気合を入れて頑張ります』
『まずはこちら、生徒玄関。さっそく七不思議のひとつ目、「足だけ女」の噂がある場所です』
『足だけ女?』
『下駄箱の向こうから女子生徒の靴のつま先だけが出ているのが見える。誰かいるのかと思って近付いてみるが、向こう側を覗くとそこには誰もいない。見えていたはずの足も消えている、という噂です』
『あんまり怖くないね』
『今夜は……何も見えませんね。あまり時間もないので、次の場所へ向かいましょう』
『ふたつ目はこちら、「血の滴る階段」です』
『血、滴ってるか?』
『血、滴ってないですね』
『埃なら溜まってるよ』
『掃除サボってるね』
『……異変を待つのも何なので、次に行きたいと思います』
『みっつ目、「足を掴む渡り廊下」です。一人で歩いていると突然白い手に足を掴まれ、異世界に引きずり込まれるとかどうとか』
『普通プールの怪談じゃねーかこれ』
『ここで足引っ張られてもイマイチ危機感ないよな』
『足を掴まれる感じは……ないですね……』
『俺も、俺もー』
『走らないでよ、危ないでしょー』
『次はよっつ目です。場所は……ここ、体育館ですね』
『わー、暗ーい』
『誰もいないはずの体育館で「跳ねるバスケットボール」が』
『無いね』
『無いですね』
『みんなが帰った後にボールが転がってたら、バスケ部が怒られますからね』
『確かにそうだけど』
『いつつ目は、「音楽室から聞こえるピアノの音」。ベタですね』
『ベッタベタだな』
『音楽室は鍵がかかっているから入れませんが、少なくとも音は何も聞こえません』
『っていうかこんなにうるさくしてたら、ピアノ鳴ってても聞こえないんじゃない?』
『確かに』
『むっつ目。「恐怖の絵」は、美術室辺りですね』
『名前てきとー過ぎない?』
『美術室前の廊下に飾られている作品の中に、身の毛もよだつ恐ろしい絵が飾られている、とか』
『んー、いっぱい絵あるけど……』
『……恐ろしい絵……それらしいのは、見当たりませんね……』
『そーだなー』
『さて、早くも最後の七不思議になってしまいました。
ななつ目。むっつの不思議を巡ってから学校を出ると、そこは死後の世界になっている。それこそが最後の七不思議……』
『……まあ、そんなわけないよなぁ』
『普通に、外に出られました』
『結局なんにもなかったね』
『学校の七不思議なんてそんなもんだよな』
『えー、これで七不思議巡りは終わりです。あっさりとした探索でしたが、どうにか面白い記事に仕上げたいと思います。それでは』
***
「……と、これでビデオは終わりです。どうでしたか、藤先生」
「なあ、鳥居。随分賑やかだったが、俺はお前の分の許可しか貰ってないぞ」
「はい」
「人増やすなら、先に言っといてくれないと」
「この日は僕、最初から最後まで一人だったんですよ」
「……え、ええー……」
「七不思議と全然関係ないものが撮れましたね」
「冷静過ぎてお前がこえぇよ」
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