第2話 あなたは誰ですか
「えっと、何しようか。
……えへへ。緊張してるかも。だって、部屋に二人きりって初めてだもんね。
あっ、そうだ! ケーキ食べる? 持ってくるね、ちょっと待ってて」
そう言って彼女は部屋を出て行った。しばらく経って戻ってくる。
「お待たせ! コーヒーはミルクだけで良かったよね。私はいつも家でコーヒー飲まないからさ、ちょっと手間取っちゃった。ごめんね」
俺の前にコーヒーカップを置いて、自分の分のカップに口を付ける。
「……ふぅ。えへへ。
今日はうち、両親二人とも仕事で帰って来ないんだ。昴くんちもだよね。だから、時間はいっぱいあるっていうか……
あの、さ。お泊り、とか? どうかな?」
赤くなった頬を両手で隠しながら、ちらちらと俺の反応を窺う。
「ああ、もう。あのね。私今かなりテンション上がってるから、おかしなこと言っちゃうかも。変な奴って思う?
あのね、実は今日のために結構準備してたっていうか……誰にも邪魔されないように、色々頑張ったっていうか。
だって、昴くんの予定全然空かないんだもん。待っててもどうにもならないと思って。
だから今日は北条さんも来ないから、安心してね」
確かにテンションが上がっているのだろう、身振り手振りを交えて一方的に喋って、一息つく。
「コーヒー飲む?」
……俺は少し迷ってから頷いた。
コーヒーなんかちっとも欲しくない。けど、肯定しないと猿ぐつわを外してもらえない。
口が自由になったら訊きたいことは色々ある。
今日俺が買ってきたケーキの存在をなぜ知っていたのか。
俺がコーヒーに砂糖を入れないことをなぜ知っていたのか。
両親の不在をなぜ知っていたのか。
今日これから来るはずだった、俺の恋人に何をしたのか。
なぜ人の家で、俺の部屋で、そんなにも我が物顔で振る舞えるのか。
なぜ俺は縛られているのか。
色々あるが、何よりもまず訊きたいことといえば――。
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