第35話 やって来たのは
博士いつからいたんだ。すっかり博士の存在を忘れていた。博士が俺の前までやってきた。
「ただ、必要な物を移動したり、バレないために少し時間がかかる。その間にもここに攻撃があるかもしれない。待機してくれるかな?」
「ああ。わかった」
……翔子が不死身だったら……なんて今頃博士を恨んでもしかたない。仕方のない事が頭の中をグルグルと回る。あの時なぜ……もし……なんで………なんて考えたって何も結果は変わらない。それよりも翔子の姿をした敵に会った時の事を考えた方が……俺に決断なんてできるんだろうか? 翔子の姿を目の前にして本当に動けるんだろうか?
まだ自分の覚悟がつけられないまま悶々としていた。
「樹? 大丈夫?」
ヒナタの声なのに、まるで翔子のようだ。大丈夫? と。こんな悲劇が自分に訪れるなんて想像してなかった。あんなにも戦闘の連続だったのに。なぜ不死身でないヒナタやレイナそして翔子が死なないなんて思っていたんだろう。命の保証などどこにもなかったのに。
「樹?」
「ああ、ごめん。大丈夫だ」
「うん。それならいいの」
ヒナタのあの態度の豹変。ヒナタはずっと無理を続けていたのかもしれないな。そういえば初めて会った時も狼狽えていたし。本当のヒナタは今のような感じなのかも。レイナが無理していたようにヒナタも何かに耐えているのかもしれない。
博士は準備の為だろう研究室に入って行った。レイナは椅子に座って少し疲れた顔をしてどこか遠くを見ている。いつものレイナではない。本当にレイナは無理して戦闘を続けていたんだ。すっかりこの部屋の雰囲気が変わってしまった。
「来た」
「どこに?」
意外にも点滅は一つでそして、別の場所だった。
「ここじゃない!」
「え?」
「どこ?」
レイナも立ち上がり探知機を見る。先に見ていたヒナタも画面を見ている。
「珍しいけど、一つだけってあるよな?」
最初に戦ったのは一人だった。そして、何もない誰もいないビルの屋上。敵の出現はランダムなだけなのか?
「おい! どうするんだ?」
一人だけの少女を思い出して翔子とかぶった俺は苛立ちを隠せなくなった。二人が動いてくれないと一人で行って翔子の前に立つ勇気がなかったからかもしれない。翔子……。
「と、とにかくそこへ行こ……!!」
レイナの決断を決行するまでもなく相手の方からやって来た。決断が鈍ってよかった。ここが博士だけになるところだった。
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