第29話 点滅

 メガネに現れた点滅に反応した俺と翔子。俺と翔子が驚いたのはいつもよりも早い襲撃だったからではない。場所だ。点滅は中心で光っていた。この探知機は点滅の距離に合わせて世界地図からその一画の地図にまで勝手に拡大縮小される。だから、点滅が中心にあるということは俺たちのすぐ近くに敵がいるということだ。

 点滅はどんどんと増え続けている。


「どうしたの?」


 と、慌てて自分達の探知機を見て愕然とする。レイナとヒナタ。

 奴らは多くの人間を襲撃するべく人口が多い都市の街中などを狙っているようだった。ここは住宅街。とても人口が多いなんて言えない。なぜ、この場所に現れたんだ。俺たちのいる場所の真上だなんて……単なる偶然だなんて思えない。


 ガチャ


 奥の部屋から博士が現れた。


「なぜバレたんだ」


 やっぱりここに俺たちがいるということがわかってたのか。でも、侵入できないんだよな?


「博士、ここには入って来れないんだよな?」

「あ、ああ。きちんと封鎖した。誰も入って来れない。防御も完璧な…」

「あれ?」

「ん?」

「どうしたんだ?」


 メガネの点滅が……。


「点滅が、敵が消えて行ってる。増えて行ってるのに、ちょうどあの辺り……ドアのあたりで消えていって……」


 ドンドン ドンドン ガシャガシャ ガシャガシャ


 博士の家の玄関の方から音がする。激しく攻撃をされてる音だ。点滅が消えるごとに攻撃は激しさを増して行く。



 ドンドン ガシャガシャ ガンガン ガシャガシャ


 博士の顔は真っ青になっている。


「間違いない。こっちの世界から樹君の世界に移動して、繋いでいる玄関からここへ侵入しようとしている」

「博士、玄関のドアの防御は?」

「念のために通常のドアよりも強くはしてあるが破られるのも時間の問題だ」


 そんな間にも点滅は移動を続けている。コンクリートを簡単に砕いていた敵の姿を思い出す。


「博士! そこの扉から出ればこのメガネで俺の世界に移動できるよな?」

「あ、ああ。だが、翔子君とレイナ君は……」


 二人を見比べて真っ青な顔が白く変わってきている博士。


「翔子達はこっちで戦ってくれ。俺とヒナタはあっちで戦ってくる」

「わかった」

「うん」

「ヒナタ行くぞ!」

「はいはい」


 なんで、ヒナタの返事は嫌々なんだよ。まあ、いいけど。ヒナタと一緒に扉から玄関ホールへと出る。メガネの点滅は一気に入れ替わった。


「こっちにも結構いるな。住宅街だしこっちだし銃は使わないから、頑張れよ」

「はいはい。じゃ、行くよー!」

「ああ!」


 ヒナタ早いって! もう消えている。俺は慌ててメガネのボタンを押す。

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