第30話 異世界への

 近距離の移動だったがいつもの感覚と同じく頭をクラッシュされた。

 博士の家の前には大勢の人、人、人。だがその目は爬虫類の目でしかもすでに腕は銀色に輝いている。やる気満々だな。俺も刀を抜く。

 遠くで悲鳴が聞こえる。クソ! もうこっちの人間が襲われているのか。見れば足元にもドス黒くなった血の塊があった。死体はいつものように消えているのか……。とにかく今は切りまくるしかない。点滅はそれでも増えている。急がないと。


 ブシュ


 ブシュ


 ブシュ


 ブシュ


 ーーー


 ハアハア


 ブシュ


 ブシュ


 ブシュ


 ブシュ


 クソ!銃が使えないのが大きい。


「樹!」


 どうやら背後にヒナタが近づいてるらしい。


「ヒナタ! 無事か?」

「それよりも、道路なら問題ないんじゃない? ここは広めの道路だし、多少の被害よりこいつらの方が問題だよ」

「ああ、そうだな。じゃあこっちに来てくれ。両サイド道を撃つ」

「わかった」



 ブシュ


 ブシュ


 ブシュ


 ブシュ


 敵を切り裂いてヒナタのいる方向へ道を作る。


 ハアハア


 ヒナタの姿が見えてきた。


「樹、息上がってるんじゃない!?」

「うるさい!」


 ハアハア


 息も上がるよ。これだけやればな。


 ハアハア


 ヒナタが俺の背中までやって来た。


「じゃ、やるぞ!!」

「背後はまかせて」


 自信満々だな。とにかく、道の片側をなるべく中心を狙って撃つ。



 ズギューン

 ドゴーーン


 うわ! 道が破壊されて、民家の塀も崩れ落ちてる。でも、まだ、あいつらはいる。


 ズギューン

 ドゴーーン


「樹! 入れ替わって!!」


 ヒナタの悲鳴が上がる。さっきの自信はなんなんだよ! なんて事を言ってられない。ヒナタと位置を変えると、また中心を狙って撃つ。


 ズギューン

 ドゴーーン


 ズギューン

 ドゴーーン


 ズギューン

 ドゴーーン


 ああ、もう災害現場のようだ。


「樹! まだこっちも!」

「ああ!」


 入れ替わらずにそのまま振り返り撃つ。


 ズギューン

 ドゴーーン



 かなり、荒らしたのは確かだが点滅はかなり減った。あとは刀でなんとかなるだろう。


「樹! あっちに戻って!」


 ブシュ


 ブシュ


「はあ?」


 ブシュ


 ブシュ


「翔子達のところに行って」


 ブシュ


 ブシュ


「でも、ここは?」


 ブシュ


 ブシュ


 ブシュ


「私一人で大丈夫。ほらヘリとか来たし。樹、この世界でその姿を見られたらまずいでしょ?」


 ブシュ


 ブシュ



 ブシュ



「それはそうだけど……」


 ブシュ


「向こうから送り込んでこなかったらこっちに奴らは来ないんだし、あっちでその銃使って減らしてよ!」


 確かにヒナタの言うとおり。こっちでこの俺の姿を見られるのはマズイ。そして、あっちの敵を失くせばこっちにも奴らは来なくなる。仕方ない。


「じゃあ、もう一度銃使うからな」

「うん。お願い」


 もうすでに災害現場だ今さら気を使うこともない。それでも一応道の中心を狙って撃つ。


 ズギューン

 ドゴーーン


 ズギューン

 ドゴーーン


 後ろを振り返りさらに撃つ。


 ズギューン

 ドゴーーン


 ズギューン

 ドゴーーン


 メガネの点滅はかなり少なくなった。が、増えていってはいる。あっちの世界の翔子達は苦戦してるのかもしれない。ヒナタ一人を残して行くのは気が引けるけれど、そんなこと言ってられない。


「じゃあ、行くな! ヒナタ、気をつけろよ!」

「はいはい」


 俺はメガネのボタンを押す。

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