第26話 眠り

 ブゥオン


 光の刀……あれもなんかいいな……って思ってる間に翔子が消える。俺も慌ててメガネの右のボタンを押す。

 少し足の肉が引きずられる感覚。怪我まだ治ってなかったか。まあ、これくらいなら走れるな。




 ついたところは街中。点滅多いな。後ろで戦闘の音がする。俺は銃を取り出して前を打つ。


 ズギューン

 ドゴーーン


 ズギューン

 ドゴーーン


 ズギューン

 ドゴーーン


 ドドドドドーーーン


 すごい音がして……ああ。ビル一個壊した。小さなビルでかなり古い感じだったしな。マジで苦情とか来ないのか? だけど、まだまだ目の前にある点滅。仕方ないビルの一個や二個! 俺は銃を構えて目の前の敵に向かって引き金を引く。


 ズギューン

 ドゴーーン


 ズギューン

 ドゴーーン


 ズギューン

 ドゴーーン


 瓦礫の山ができてるあたりには砂埃が舞っている。俺が撃っていた辺りの点滅はもうほとんどない。後ろで苦戦しているようだ。そちらの点滅はほとんど減ってない。


 キューイーン

 ドドン


 というレイナの銃の音が響いているが。連射可能な上に弾の補充がないだけにいい武器だな。それでもこっちのビル破壊とは比べられないんだろう。銃をしまいこんで刀に替えて俺もそちらに加勢する。


 バシュ


 ーーーー


 バシュ


 ハアハア


 またこの展開。悪夢だよ全く。多分背中を斜めに切られたみたいだ。背中に衝撃があり振り返って切りつけた敵の死骸の腕には俺の血がベッタリついている。メガネはだてメガネになった。点滅はさっきので終わった。目の前の敵と戦っている間に後ろを取られてしまった。メガネの意味なかったよ。博士。


「樹! 帰るよ」


 翔子に声をかけられる。俺もメガネの左のボタンを押す。せ、背中ー!




 部屋に戻ると博士はいなかった。博士に小言を言われる前にさっさと着替えよう。

「俺、着替えてくるな」

「うん。傷はいいの?」

 翔子が俺の後ろを気にしながら言う。

「ああ、見えないからか大丈夫だよ。行ってくるな」

 部屋に入る。なんだか同じことの繰り返しだ。こんなの毎日続けるのか? 翔子達はここにずっといるんだろうか? こんな毎日をいつから続けているんだろう? 聞いてみたいけれど聞いていいのか悩むな。憂鬱な質問だな。うお! 引っ張られる背中! そんな憂鬱な質問を考えながら新しいスーツに着替えていたが背中の傷が酷いみたいだな。着替えてもいいのかな? 血とか……そういえば出血の量が少ないな。再生する前に血が先に止まるのかもしれないな。でないと、出血多量で倒れてしまう。かなりの致命傷でも倒れずにいたのはそのせいか。特に出血してる様子もない。床も綺麗なままだ。着替えてもいいだろう。




 着替えて部屋から出ると翔子が走り寄って来た。


「よかった。遅いから博士に中を見てもらうか迷ってたんだよ」


 本当に心配してたんだろう。翔子は俺を見てもまだ安心しきれてない顔をしている。


「ごめん。傷でスーツ汚れるかなと考えてたんだ」

「そうなの? 傷は? 」

「ああ、多分大丈夫だよ」


 ん? 今の質問はスーツの心配じゃないよな。まあ、どっちでもいい。疲れは全く取れていない。早く横になりたい。


「多分って……」

「大丈夫だって。それより休まして。寝る」


 そう言いながらもソファーに歩み寄っていた俺はソファーに腰掛け横になる。


「お休み」

「お休み。樹」


 ずっと眠っているのに体は眠りを求めているんだな。俺はすぐに眠りに落ちて行く……。

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