第25話 ポニーテールとメガネ

 奥の扉が開いてレイナだけが出てきた。


「レイナ。ヒナタは?」

「今機械に……もう大丈夫だよ。あ、それと翔子は完治したよ。今シャワー浴びてるから」

「あ、うん。そうか。良かった……」


 ヒナタの無事に喜んだ後にさらに嬉しい報告だった。翔子が次からは参加できる。が、その後のシャワーのくだりで顔が熱くなる。つい想像してしまった……。


「あー、俺、横になるわ。この足治りそうな頃に起こして、これじゃあ着替えもできないから」


 そう言ってレイナの返事も聞かずにソファーに横になる。


「うん。わかった」


 そういうレイナの言葉を聞いて俺は目をつぶる。そこにはポニーテールを左右に揺らしながら俺に話しかけてる翔子がいた……。


 *


「樹! どう? 着替えられる? 」


 聞き慣れた声がする。俺はグッと現実に戻される。

 目を開けると目の前には変わらぬ翔子がいる。思わず翔子に抱きついていた。


「い、樹? 」

「大丈夫か? 翔子? 」


 ダメだな。ポニーテールやメガネだけでは区別がつかなくなったのか、それとももうこちらの翔子に情が生まれたのか。心配で確認せずにはいられなかった。そこにちゃんと翔子がいるのかを。


「う、うん。大丈夫。もう治ったよ」


 翔子の温もりと感触を確かめてやっと離れられた。俺ってこんなんだっけ?


「そうか。よかった。じゃあ、俺も着替えて来るな」


 起こされたんだ。足が治っているか、ほぼ治ってるんだろう。


「立てる?」

「ああ」


 体を起こしてソファーから立ち上がる。全くなんて不自由な不死身だよ。俺の体力がなさすぎが問題か。


「じゃあ着替えてくるな」

「うん」


 レイナがいないが博士の手伝いだろう。何を作ってるんだろう? スーツの修理か……毎度毎度だからな。

 部屋に入り並んでるスーツを見る。これがなくなるのが先か俺がスーツを壊さず戦い終わって帰るのが先か……だな。




 着替え終わって部屋を出るとそこにはレイナと草介博士もいた。俺は博士に近づき足の部分がほとんどちぎれかけのスーツを渡す。博士はもう俺の姿を見てたのか……いや、破れたスーツを見てたのか、黙って受け取り、そばのテーブルに置いた。


「樹君、聞いたよ。ヒナタ君に」

「へ? 」


 なに? 何を?


「君が残りの敵の数を探知機で確認してるって」

「ああ。そうだ! あれ不便だよ! 確認中に背中から刺されたんだ! 俺も翔子みたいなのが欲しいんだけど」

「ふっふっふっ」


 気持ち悪い。どっかの悪役みたいだよ博士。


「そう言うと思ってだな」


 いや、ヒナタにすでに聞いたからだろ?


「これを作っておいたよ! 」


 ジャーン! 的に紹介された新しい道具はメガネなんだけど。それはすでに翔子がつけてるし。全然新しくないよな。


「あ、ありがとう」


 ありがたいが……普通に渡してくれた方がありがたみがあったと思う。

 博士の手からメガネをもぎ取るように受け取る。まあ、よかったよ。これで……また変な形になってなくて。ゴーグルみたいなのとか……作りそうだ。俺の壊したスーツの修理があるからこれですんだのかな。

受け取ったメガネをかけてみる。普通のだてメガネだな。外して移動ボタンを確認する。翔子はいつもメガネに触って移動している。メガネのフレームの上に細長いボタンがある。右が赤で左が青か。これで確認をいちいちしなくてすみそうだ。メガネをかけなおす。壊さないようにしないと……やりそうだな俺。前のスマホみたいなのとどっちも持ってた方がよさそうだな。


「これでスーツの修理が楽になるよ! じゃあ、これも直してくるから」


 楽にと言った割にはご機嫌でスーツの修理に向かう博士。奥の扉へと博士は消えて行った。本当にこれで楽になるんだろうか。そこはあまり関係ない気もするんだけど。


「見て! 樹! 」


 と、こちらも嬉しそうなレイナが銃を俺に見せつける。見ると、レイナの銃が少し大きくなってる。十分に暇あるんじゃないか博士!


「博士に大きくしてもらったのか? 」

「そうなの威力も上がったの。連射もそのままできるし! 」


 嬉しそうだな。今までなんであんなに小さな銃だったかそっちの方が気になるが、多分連射の問題だろう。俺のは連射できない。次を打つために一定の時間がかかる。敵のスピードを考えると連射できないのは致命傷になる。俺のように! 博士め、俺が不死身だからってこんな連射できない威力重視の銃を渡したのかよ。


「なあ、なんで片方だけしか持ってないんだ? 三人とも? 」


 刀だけとか、銃だけって戦いににくくないか?


「え? 刀も銃も両方持ってるよ。だけど、私は刀があんまり……」

「私は銃があんまり……」


 翔子まで。おいおい、両方持ってたって……使ってなかっただけって好みで戦ってるのかよ。三人とも……余裕だな。

 と、目の前に点滅が現れた徐々に点滅は増えていく。


「来たな」

「来た」


 俺と翔子の声がかぶる。

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