第24話 俺の願い

 なんだよ! ここ! 場所の選び方が……と敵に文句言ってはいられない。ここはどっかの国の球技場。正確には野球場。プロの本格的なそこの真ん中にいるが敵は客を狙ったんだろう多くは客席にいる。助かった。ヒナタ達は俺と同じマウンドにいる。これでほぼ球場を破壊することになるが……仕方ない。銃を取り出して客席めがけて撃ちまくる。360度!


 ズギューン

 ドゴーーン


 ズギューン

 ドゴーーン


 ズギューン

 ドゴーーン


 やっぱりこれって完全に壊してるよな。客席が瓦礫に変わる。


 ズギューン

 ドゴーーン


 ズギューン

 ドゴーーン


 ズギューン

 ドゴーーン


 客席を撃ち抜いてる俺のそばにヒナタが来た。俺を狙って接近する敵を倒してくれている。


 ズギューン

 ドゴーーン


 ズギューン

 ドゴーーン


 ズギューン

 ドゴーーン


 これって苦情は来ないのかな? まあ、人命第一だよな。


 ズギューン

 ドゴーーン


 ライトに直撃したようだ。一つが倒れ更なる瓦礫の山と化した。まだ範囲がいまいちわからない。前よりも大きく威力も強いって事しかわからない。


 ズギューン

 ドゴーーン


 ズギューン

 ドゴーーン


 これでようやくすべてを打ち砕いた。客席全て瓦礫に変わった。

 俺は銃をしまい刀を抜く。俺たちを狙って増えていた周りの敵を倒す為に。



 さっきのスーツは博士の言うとおり壊れてたのか、俺の体力が回復したからか、動きが軽い。この調子でやれるか?


 ―――


 すれ違い様


 グサッ


 またかよ。


 バシュ


 俺を切った敵を切る。


 ハアハア


 野球場で繰り広げられた戦いは一面の敵の死骸と一面の青色。そして、瓦礫と化した客席。




 俺は息を全身でしながら周りを確認する。見える範囲に敵はいない。探知機を取り出して見る。点滅は全て消えている。


「ヒナタ!」


 レイナの悲鳴が聞こえる。さっき切られた太ももの傷のせいだろう歩きにくい。レイナが駆けつける方へと向かうがここからだとよく見えない。敵の死骸が邪魔してる。

 レイナがヒナタの方へとたどり着いたようだ。多分生きているか確認してるんだろう。レイナがヒナタの首に手をあてて脈をとっているみたいだ。その様子には手慣れたものを感じた。レイナにとってこれは特別なことに見えない。


「樹! ヒナタは大丈夫。先に帰ってるね」


 ヒナタの姿が消えてすぐにレイナも消える。よかった。声の感じも余裕がありそうだった。

 俺も持っていた探知機の青のボタンを押す。左ももの肉が引っ張られる感覚。無傷で終わってくれという俺の願いはいつ叶うのか。




 そして、俺は博士の部屋に戻された。

 バタバタと博士が部屋に入ってくるところだった。レイナに呼ばれたんだろう。レイナと二人でヒナタを抱えて奥の扉の部屋へと向かっている。

 俺も手伝いたいんだけど、足の傷が思ったよりも深くて足を動かしにくい。俺が手伝えば、ヒナタを落としてしまいそうだ。それに、草介博士は意外にも力がありそうだった。さっきのレイナに今の草介博士……こういうことが日常なんだろう。二人を見送って俺はソファーに腰掛ける。足の傷がもう少し治らないと着替えも難しそうだ。少しでも休んでるのが賢明だろう。プールには翔子がいるがプールは一つではなかった。全部で五つもあった。元々は十名以上ここには人がいたんだ。その時に作られていたんだろう。

 これで……


「レイナと二人か」


 さすがに心細い。レイナが弱いわけじゃない、そういう問題ではなく、味方の人数の問題だ。あとはこの足だ。いっそ体を切られた方が動きやすい。体だと引っ張られたり重たかったりと多少の感覚はあるが、敵を前にして、そしてスーツを着てるからかその辺は我慢でなんとか乗り切れた。だけど、足はさすがに無理だ。引きずるようになり踏ん張ったりできない。走るなんて足がもげてしまうだろう。うう。想像して気分悪い。

 とにかく心細い……翔子の治療に何時間かかってるんだろう。そして、敵の襲撃はまだ続くのか? 疲労だけなら外に出ていったんは家に戻り休んでから放課後にまたくればいいが、傷だらけではそうもいかない。半端じゃない怪我だ。間違いなく病院に連れていかれるだろう。救急車まで呼ばれて。そして、救急車の中で回復して気味悪がられて……って、それだけではすまないな。この回復力……。


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