第15話 宇宙人なら

「来た!」


 翔子の声が部屋に響く。


 ブゥオン


 という音と共に翔子が消える。

 レイナ、ヒナタも消える。


「樹君!」


 はいはい。わかってるよ。まだ治ってない肋骨の傷を想像しないように赤いボタンを押す。

 それにしても、探知機の点滅の数……襲撃多いよ! うわー! またきたよ。傷!




 目の前には……また街中だ。何か変な感じがする。が、それどころじゃない。またすごい数の敵だ。『樹』が死んでから俺が来るまでに時間がかかってるんだな。目の前に立ちふさがってるのはかつての被害者なんだから。

 俺は今度は遠慮なく銃を使う。翔子達はまた遠そうだし。


 ギューン

 ドゴーン


 ギューン

 ドゴーン


 ギューン

 ドゴーン


 どうしよう。かなりダークな場面だ。かつての被害者である敵を吹き飛ばしているのに……この爽快感はなんだろう。街を壊してもいいということも手伝ってるんだろうけど。


 ギューン

 ドゴーン


 やっぱり爽快だ。


 爽快感に酔っている場合じゃない。俺の包囲網が狭まってきている。なんだよこの数は。爬虫類的な目で見られるのも人間の形をしてるから余計に気味が悪い。


 最後の一発!


 ギューン

 ドゴーン


 もう接近戦になる。銃を刀に持ち替えて襲ってくる敵を切って行く。この腕輪すごいな、相変わらず。スーツの力でさらにパワーアップしているし。そうだよな。『樹』にはスーツも腕輪も要らなかった。『樹』がいなくなり、博士がこれだけのものを開発するだけの時間は過ぎているんだろうな。ここにいる敵の数はその間の被害者の数なんだ。本当にこんな俺でいいんだろうか? スーツも腕輪があっても傷だらけの俺で。


―――


 肩で息をする。やっと終わった。筋トレでも始めないといけないな。スーツに体がついていかないよ。せっかくの力を使いこなしていない。これ以上は体力の限界だってところでやっと敵が全ていなくなり戦闘は終わった。危ないところだった。もうこれ以上動くのもつらい。

 改めて周りを見て気づいた。あの感じていた違和感。そういえば……あの一番初めのビルの屋上も……そうだったのかも。



「樹! みんなが戻ってくる。帰るよ」


 ヒナタに言われて思い出す。そうだった。俺ってこの世界の人に見つかったらいけないんだよな。変なヒーローだよ。何もかも。


「ああ。帰るよ」


 探知機を取り出し青いボタンを押す。

 今度は背中をざっくりやられたみたいだな。すごい感覚が襲ってきた。傷の感覚がかなり鈍くしか感じないから、背中に攻撃を受けた時、背中に打撃を受けた衝撃しか伝わってこなかった。俺っていったいどこまで不死身なんだろう?




 戻ってきた。いつもの博士の部屋に。さて博士に聞かないとな。まあ、俺が勝手に思い込んでただけでワザと内緒にしてたわけじゃないんだろうけど。


「樹君!」


 博士は俺を見て嬉しそうにしてる。博士から見ると無事なスーツを見て。前からは無傷にしかみえないだろうからな。


「博士。樹、今度は背中切られてるよ」


 嬉しそうにレイナが博士に報告する。一応、生死かかってるような傷なんだと思うんだけど。移動の時のあの感覚では。

 博士が俺を凝視している。仕方ない。


「ああ、ほら」


 俺は博士に傷口を……スーツの破け具合を見えるように後ろを向く。


「ああ!」


 博士の悲しそうな声。これが俺の傷を見ての叫びだったらな。本当に俺のことどうでも良さそうだよ、この人。

 そんなことより確かめないと。さっきの事実を。


「なあ……あれって、あいつらって外国にも出てくるんだよな」


 そう。さっきまでいた場所は日本ではなかった。博士はあいつらを宇宙人だと解釈している。みんなもそう思っているのかはわからない。だけど、確かに青色の血液にさらには死者と同じ姿で現れ、目は爬虫類のようになり、さらには腕を刃物と化してすごいスピードで襲ってくるんだ。地球にはいなかった生物の仕業、つまりは宇宙人となるんだろうな。それ以上の説明がつかないから。

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