第12話 夢か幻か
翌朝目覚めると朝の日差しの中で、あれは全部夢だったんじゃないかと思えてきた。
玄関を出ると翔子がいた。
「おはよう、樹!」
「あ、おはよう」
メガネはもちろんかけてない翔子。なんかどうしていいかわからない。
「なによ! 変な顔して、学校遅れるよ!」
と、さっさと先に行く。いつもの翔子だ。翔子の家はすぐそこ、俺の家の斜め前だ。こうやって会うことも多い。なにせ同じ学校だから朝の登校時間も同じになる。
「翔子ってさあ、その……メガネ持ってたりする?」
「……はあ? メガネなんてかけてたことないでしょ?」
「だよな!」
俺はなんの確認したいんだよ。
「それより昨日一緒にいた子は誰?」
「え?」
「ポニーテールの女の子!」
ヒナタ、バッチリ翔子に見られてるじゃないかよ! 気をつけろよ。翔子のこと知ってるならなおさら気をつけろよな!
「え? ああ、そんな子いたっけ?」
「樹、なんかその子と話してたじゃない!」
ああ、多分ゾンビパウダーの効き目で草介だと思ってヒナタに話してたんだ。何か言い訳を考えないと。
「ああ! そう! 道を聞かれたんだよ」
「ふーん。それで樹、いつもとは違う帰り道を帰って行ったんだ」
「そうなんだよ。説明してもわからないみたいだったんで」
帰り道も翔子と当然同じになる。怪しんでたのか? だよな。俺でも怪しいと思う。翔子と見知らぬ男が話しながら帰りに違う道を歩き出したら、彼氏出来たのか? とか絶対思うな。
「ふーん」
なんか疑いが完全に混じってるな。だけど、あんまり詳しい話はできない。なにせゾンビパウダーの効き目で俺は完全に幻覚を見てたんだから。どんな状態だったのかもわからない。それにしても、翔子に話を聞かれてたら即アウトだったな。きっとわけわからない独り言が続いていたんだろうし。
「それよりさ! 翔子!」
「うん?」
「髪型変えたら? 一つにするとか」
なにせ紛らわしい。あっちの翔子との区別がメガネだけなのもなんか不安だ。
「へえー。一つにね。樹てポニーテール好きなんだ」
ああ! せっかく話を変えたのに。また話がヒナタに戻って来てしまった。
「あの子、同じくらいだよね、年。あの時間にここにいたってこの辺の学校の子?」
ダメだ。俺! 騙されるな。これはきっと翔子のトラップだ。
「さあな。誰だか知らないし。きっとこの辺じゃ、ないんじゃないか? 道を聞かれたんだし」
いいぞ! 俺! いい切り返しだ。
「ふーん。そう」
おもむろに翔子は髪をほどき一つに結び直す。
「うん。そっちの方がいいよ!」
紛らわしくない!
「そう?」
翔子はそう俺が言うとなんだか嬉しげだし、俺も嬉しいよ。紛らわしくない。
そうして、学校についた俺は現実と幻覚を再確認して学校での一日を終えた。記憶の改ざんは草介という幼馴染がいたという一点だけだった。仲のいい友達はそのまま存在したし、翔子の存在もちゃんと学校にあった。
なんだか昨日のこと全てが幻や夢の様に思えてきた。草介博士とあの家に化け物と三人の女子は幻ではないかと。
だが、行かないと……行って確かめるのが一番だ。幻だとわかればいちいち、指を切る必要もないし、ヒナタがどこからか現れるかもとビクつくこともない。
博士の家……お化け屋敷だ。ちなみに翔子に聞いたらやっぱりここの噂は小学生の頃に存在していた。お化け屋敷に俺は通っていたんだ……ろうか。ここまで来て躊躇う。と
ガチャ
草介博士の家のドアが開いた。家の中からヒナタが飛び出して来た。
「樹! 早く! 着替えもあるんだから急いで!」
腕を取られて中へと入らされる。昨日とさほど変わらぬ展開なんだけど。俺がヒナタを草介だと思っているかいないかの違いだけじゃないか!
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