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次の日曜日も例のカフェに出かけて行き、30分待ち、コーヒーを飲み、お喋りをし、公園を散歩し、ボートに乗り、ベンチでサンドイッチを一緒に食べた。花売りの少女が近づいてきた。彼女は呼び寄せ、「お釣りはいいからね」と言って、1本の花を買い、彼の胸ポケットに挿した。マイタケには夢のような1日であった。


キャロラインの絵を描くについて、

「私の部屋は友達もいるから、あなたのアトリエに伺うわ」となって、マイケルは慌てた。

「母を介護する必要が出来て、アトリエをそのために潰しました」と嘘を言った。

「看護婦さんをお雇いになったの」

「ええー、マーそういうことです」

「お部屋を借りません。私がそこに住んで、あなたが通って来て、ひと部屋をアトリエにするって」

マイタケには異存はなかった。


「いいお部屋が見つかったわ。マイタケきっと気にいってよ。保証金が少しかかるの」

「幾らですか?」

「2000ドル」

もう少し安い所とは言えなかった。彼の給料は殆ど家計に消えて蓄えは1000ドルしかなかった。ボーナスで返せばいいと会社の金庫から借りた。半年だけ借りるのだから、そう言い訳をした。彼が行ける日は月、水、金の会社が引けてから9時までの時間と決められた。休みの日に一日中描いていたいと思ったが、休みの日ぐらいゆっくりしたいが彼女の言い分であった。


2000ドルの部屋は素晴らしかった。家賃は月に300ドルという。それは彼女が払うのだと思っていた。早速に彼は絵の道具を運び込んだ。家財道具に500ドルを要した。これも拝借になった。

彼女をモデルにした絵にかかった。彼女はブラウスのボタンを外し、服を脱ぎだした。彼は慌てた。

「あら、ヌードでないの。私、裸に自信があるんだけど…」

「最初からでは手が震えてはいけません。着衣でも裸を想定して描くのです。次にしましょう」彼の口の中はカラカラであった。

「そう、残念ね」。彼女の衣装は500ドルを要した。これも金庫からであった。

その夜、彼は夢を見た。彼女がヌードでポーズをとる。形のいい乳房、なだらかなお臍から恥丘にかけての線、柔らかな草むら、彼は絵筆を置いて抱きしめたいのを必死で我慢して筆を動かした。絵を描くのがこんなに苦しいとは思わなかった。そこで目が覚めた。


出来上がった彼女の絵は、満足であった。人生最高の絵だとマイタケには思えた。

彼女は「これ私?もう少し美人だと思うけど」と少し不満げであった。彼女の持つ小悪魔的な表情がよく表現されている。少し、きつい顔になったのは仕方がないと思った。

「マイタケ、私、役が決まったの。今度の役は是非やりたいわ。俳優はお金がかかるのよ。俳優は演技だと言われるけど違うの。いいものを着て、いいものを身に付けて女優になるの。貧相な女優って魅力無いでしょう。助けてくださらない」

宝飾品まで入れて、半端ではなかった。締めて1万ドルいった。交通費、パーティに着ていく衣装と次々に費用がかさんでいった。全て彼女のためである。もう彼のボーナスの域は遠に越していた。


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