第9話 こっとんうぃーどは情け深い

 僕と祖母の関係が露呈したのは、高校生活も後半に差し掛かってからだった。

 露呈したと言っても、僕と祖母の関係が険悪だ、といった程度のことだけど。


 食事を与えられず、台所に立ち入ると発狂され、僕の部屋の電気のブレーカーがいつも落とされていたことは、相変わらず、誰も知らない。


 露呈したきっかけは、ちいこさんだ。

 僕はちいこさんの巧みな話術により、祖母から無視されていることを漏らしてしまっていた。


 その頃になると、僕は睡眠が下手くそになり、常に腹を下していて、一人での食事が摂れなくなっていた。

 当時、そのことを知っていたのは、恋人でも、友人でも、学校の先生でも、もちろん祖母でもなくて、近所に住む叔母のちいこさんだけだった。


 ちいこさんは、いろいろと気にかけてくれていた中で、僕の置かれている状況を、良く思わなかったのだろう。

 だから、彼女は「親には言わないで」という僕との約束を、僕のために破ったんだと思う。

 それは少なからずショックだった。

 今から考えると、感謝してもしきれないのだけれど。


 ちいこさんが母に連絡を取ったと知らない僕は、海外に住んでいた母親が突然、日本にやってきたことに驚いた。


 そしてその週のうちに、学校へ訪れて三者面談をし、そのまま病院に連れて行かされた。

 寝起きを管理され、食事を管理され、薬を管理され、帰宅時間や交友関係まで見られるようになった。


 はっきりと、鬱陶しかった。それまで祖母に任せきりで、何を今更干渉してくるのだろうと。しかも、もう高校生だ。恥ずかしくて仕方がなかった。

 けれど、それからの生活は一変する。母はその後、三~四か月に一か月のペースで帰国し、祖母宅に滞在した。


 祖母も人がいると別人のようになるため、母親のいる間は、発狂することも、ブレーカーを落としに来ることもなくなった。

 食事は全て母が用意し、祖母と母と、ときどきちいこさんが加わって、食卓を囲んだ。


 睡眠障害だけ、なかなか治らなかったものの、食事は普通に摂れるようになり、腹も毎日は下さないようになった。


 素直に母からの愛情を感じとれるようになったのは、しばらくしてからだけど、そのときから母の存在を心強く感じていたのは、間違いない。

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