第4話 甘い回想
母さん達、忙しくてとても美貴ちゃんの結婚式に外国まで行けそうにないのよ。。。あなた一人で旅できるかしら?あなたほら、美貴ちゃんにはお世話になったし、あんなに仲が良かったんだから。。。もう会いたくても、そう簡単にはなかなか会えなくなるのだし。。。
母親の声が遠くで響いた。母親はいわゆる大企業の管理職だから、フルタイムで働いている。
保は不機嫌な顔をした。
べ、別に仲がいいとか、そんなんじゃ。。。
当時、高校生だった美貴はいつも自分の遊び相手になってくれた。。。姉の美香は大学生で、歌が上手だった。美貴はいつも姉と張り合ってたっけ。お姉さんは家を継ぐでしょ、私は家から出る人間だから、と言って。
ふっと、セーラー服姿の美貴を思い出した。何故なのかわからない。ダメよそんなことしちゃ!多分。。。近所の子に取られたバケツを取り返したくて、思わず右手に持ってたプラスティックのスコップを振り上げたんだ。公園の砂場だっけ。
自分が何をしたかったのか忘れたが、とにかく。。。かがんだ美貴にぎゅ、っと抱きしめられた時、セーラー服の中身がチラッと見え得るかと思ったら、甘い匂いにいつまでも。。。このままずっと抱きしめられたいと思ったことなんて、口が裂けても、言うまい。
保は、コツコツと机を神経質に中指で叩いて、母親の気をひくと、『一人旅だって平気だよ、僕は英語だって話せるんだ」と言った。
そうね、と母親は笑って、「さすがね、じゃ、保一人だけど、行くって返事するわね」と言った。
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