第9話 ロクリンピック
「新大陸誕生!」
今振り返っても、あれほど人間界を騒がせたニュースはなかったと思う。まだ自分自身が幼かったころに起こった大事件だあの時から50年たった。
今日は東京で開催されるオリンピックの開会式だ。親から聞くことには、以前は、私が生まれた年の前年に東京オリンピックが開催されたらしい。今日は自分自身の目で自国開催のオリンピックが見られるのだ。
もう一度新大陸の話をしよう。
太平洋上に生まれた新大陸はオーストラリアほどの大きさをしていた。ニュージーランドの東、ちょうど南アメリカ大陸との中間あたりに突然現れた。人為的なものでもなく、海中火山活動による地殻変動の影響らしい。科学的な話は知識がなく全くもってわからない、ただ突然現れたのだから受け入れるしかない。
想像以上に世界の動きは慎重かつ、団結していた。どこかの国が領土を主張、といったニュースを見ることはなく、一般人目線から見れば極めて平和的に事は進んだ。国連が音頭を取り、まずは大陸の安全確認、生態系変化の影響範囲確認、物性の科学的な調査・・・。ゆっくりだが着実に大陸の姿が明らかになっていく。
そうして大陸誕生から30年の時が経った頃、ついに大陸へ新興国を作る計画が見え始めた。大陸ができてすぐから計画自体は動いていたらしい。せっかく一から新しく国を作るのだ、今までの歴史を振り返り、最も進歩的で平和な国を作ろうと世界中の有識者が頭を使い、30年かけて計画を立てていたのだ。世界中から新興国の住人となる人間が選ばれ、ついに新たな国が誕生したのだった。
今日は新興国が誕生して20周年の日でもある。今回のオリンピックは一味違う。私にとって自国開催であることに加えて、新興国が初参加する、地球上の6大陸そろい踏みの初のオリンピックでもあるのだ。
待ちに待った開会式は非常に感動的だった。そして翌日から一斉に競技が始まる。いよいよ始まるのだ―――
―――オリンピックが終わった。今回のオリンピックは一言で振り返ることができる。新興国の圧勝。
新しい大陸の国は、賢くて体が強い優秀な人間が大勢移り住んで作られたものだ。新興国はありとあらゆる競技で金メダルをかっさらっていった。おそらく今後、旧大陸の国が敵うようなレベルではないように見える。これからは新大陸の国内大会を見た方が面白いんじゃないかな。
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